欲望という名の電車 (新潮文庫)
この戯曲はアメリカを代表する劇作家のひとり、テネシー・ウィリアムズのもっとも有名な戯曲で、
アメリカやイギリスの有名俳優たちが代々ブランチとスタンリーを演じている。
どうしても映画のビビアン・リーとマーロン・ブランドのイメージが強いが
最近ではジェシカ・ラングが舞台で演じたブランチが評判だったらしい。
若さも経済的基盤も失い、孤立無援の立場に追い込まれながらも
南部の誇りと華やかな過去にすがりつく繊細な心の持ち主、ブランチ。
それに対して野卑だがタフで現実的な生命力の塊、スタンリー。
「ガラスの動物園」では、はかない夢に逃れようとする人間に対する同情的な視線があったが、
ブランチ対スタンリーの戦いは遥かに容赦がなく、ブランチは完膚なきまでに敗北する。
ここに描かれているのは、単なる二人の人間同士の葛藤ではなく、
アメリカの歴史の転換点のアレゴリーとも言える。
デリケートで優しい心を持ちつつも、荒々しい現実に敗れ去り、ついには狂気に陥った
ブランチの姿は哀れを誘うが、最後の場面での彼女は不思議な威厳に満ちている。
舞台となったニューオーリンズのけだるい熱気がそのまま伝わってくるような名戯曲。
欲望という名の電車 [DVD] FRT-140
ビビアン・リーが、狂気極まる姉の役を見事に演じている。精神を患ってしまった主人公は、あまりにも繊細で、はかなく、観ていながら、こみあげてくるものがあった。スタンリーのすさんだ暮らしや性格も、マーロン・ブランドが熱演していた。ビビアン・リーの主演映画は、女性の生き方について考えさせられるものが多々あり、見ごたえがあると思う。
欲望という名の電車 オリジナル・ディレクターズカット スペシャル・エディション [DVD]
ジェームス・ディーン。彼の魅力は、甘いマスクと少年の輝きを持ったオーラにある。そのディーンが憧れた男、マーロン・ブロンド。彼の魅力の中に、少年の輝きは見られない。あるのは、たくましさや野性的な咆哮。見通しを持たずに走り出せる強み、そして、男として見せるもろさにある。打算やしがらみに縛られた男達に、なにかを語りかける映画である。