中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす (NB online books)
幼年期に徹底した反日教育を受け、建前上は日本が嫌いと言って憚らない多くの若い中国人が昨今様々な方法で日本に渡航してきており、実際に接して本音を聞いてみると皆一様に日本が大好き、中国に帰りたくないと言っているのは何故かと常々思っていましたが、本書はその理由を良く解き明かしていると思います。勿論経済的な理由だけで日本に来たと言う方もいるのですが、嫌いな国で態々働くこともないのにと思っていました。
中国人に限らず日本のアニメ、マンガは世界中の若者に大きな影響を与えており、BBCが世界33ヶ国の国民に行っている世界に一番貢献している国は何処か、という調査で、日本がここ3年連続世界一に輝いている事の理由の一つとも考えられます。
日本と言う国、国民は被虐的な記事が好きな(?)日本のマスコミでは殆ど報道されませんが、海外では高く評価されているという事を日本人はもっと認識すべきで、実際世界中の人々に大きな影響を与えているのです。本題とは関係ありませんが、私は1995年から2000年まで英国に滞在し、英国でもあからさまな人種差別を受けた経験がありますが、引き続き英国に滞在を続けている次女は現在ハイスクールで、日本人であるという事だけでクールであると言われているのは、ここ10年位で日本という国の評価が英国で大きく変わった事を良く表していると感じます。
超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会
サイボーグ技術〜バイオテクノロジーの先端技術の紹介としては非常に興味深く読めました。以前、立花隆氏のサイボーグ技術に関する番組(NHKスペシャル)で出てきた事例が文章として読めます。盲目・難聴な人も最先端科学の力を借りて視力・聴力を復活させる可能性が現実化しています。また遺伝子治療により難病を克服したり、寿命が延びたり、脳の機能向上に繋がったりする可能性が真剣に議論されている様子が良く分かります。しかし「何処までが治療か?」という線引きを誤ると大変そうだという危惧も読み取れます(例:軍事転用)。
著者は「このような最先端科学は人間の心身能力の開発に利用できるのだから、もっと積極的に利用して人類の進化を促すべし」(超人間主義)という立場です。しかし、私としてはもっと「システム思考」的な注意深い考察が欲しい処でした。寿命に関する議論では「ゾウの時間 ネズミの時間」(本川達雄)の側面も考慮すべきでしょう。つまり、ゾウもネズミも生存中における心臓の総鼓動数はほぼ同じであり(鼓動の周期が異なるだけ)、総鼓動数の意味で長寿命な哺乳類はナマケモノだそうです。ですので「寿命を延ばす」ことが「単に鼓動周期を長くする」ことなのか「総鼓動数を増やす」ことなのか判然としませんし、どちらにしても「そうして寿命を延ばすことが(脳にとって)幸福に感じることなのか?」は不明です。また「人類の脳を直接結んだネットワーク(= World Wide Mind)」が実現するとコミュニケーションの質・量が向上する可能性が論じられますが、そんなWorld Wide Mindに「新たなウィルスが仕込まれたら?」などの負の側面は素人でも思いつく処です。このように一歩進んだ考察が欠けている処が散見されますので、適宜ツッコミを入れながら読まれると良いと思います。