赤塚不二夫 天才ニャロメ伝
この本は、長谷邦夫さんが漫画で描いた赤塚不二夫さんの一生です。
長谷邦夫さんのお名前は以前より知っていたのですが、赤塚不二夫氏と殆ど一心同体といっても良いほどの長いコンビを組んでいた方であるというのは寡聞にして知りませんでした。
思い返せば赤塚氏のヒット作は、非常に息の長い連載モノでした。
その殆どすべてにかかわり、アイデアを一緒に考えていた方が長谷さんでした。
ほぼ一生の大半を赤塚氏と共に過ごしてこられて、その視線が尊敬と慈愛に溢れているのが泣かせます。
フジオプロからはその後の人気作家が大勢出てきますし、赤塚氏を慕う人も大勢おられます。
赤塚氏の、なんでも受け入れてしまう才能と作風が影響しているのでしょうか。
赤塚氏は、トキワ荘を出てから、性格がどんどん変わって弾けていったということのようです。
面白いギャグ、アイデアを探すために様々なことを試してゆき、それがどんどんエスカレートしていきます。
手塚治虫氏の作品に憧れ、ナンセンス・ギャグという世界を開拓した人であった赤塚氏は、その世界に踏みとどまるために、命のすべてを費やしたのではなかったでしょうか。
赤塚氏の晩年は、まんがを大きく外れていき、自らナンセンスの中に身を置いたように見えるのですが・・・。
天国では、手塚先生や藤子F氏や石ノ森氏と再会できたでしょうか。
漫画に愛を叫んだ男たち
■私は長谷邦夫さんに大きな恩義がある。2001年3月に職場(徳島/北島町立図書館・創世ホール)で氏の講演会を開いた際、それはもう大変なお世話になったのだ(演題「漫画風雲録~トキワ荘物語」)。講演は、自らの青春と漫画界への愛情にあふれた内容で、聴衆に深い感銘を与えた。今も、長谷さんとは連絡を取り合っていて、気に留めていただいている■本書は、講演会の内容をさらに深めたような展開であり、私は夢中で読んだ。面白くてたまらないのだ。十代の頃、肉筆回覧誌『墨汁一滴』に集った石森章太郎、赤塚不二夫、横山孝雄らと著者が東京で会い、熱く夢を語り合う。それからトキワ荘の手塚治虫をたずね激励を受け、全員がプロの道を歩み始めることになる■その後の登場人物は、藤子不二雄(藤本弘+安孫子素雄)、寺田ヒロオ、つのだじろう、永島慎二、石川球太、つげ義春、水野英子、柴野拓美、福島正実、星新一、光瀬龍、筒井康隆、眉村卓、大伴昌司、徳南晴一郎、丸山昭、ちばてつや、山下洋輔、横尾忠則、三上寛、井上陽水、タモリ……。もう大変な顔ぶれであり、もう1つの戦後文化史というべきものがここに息づいているのだ■長谷氏は、フジオ・プロで、長い間赤塚さんのアイデア・ブレーンあるいは影武者的な立場でずっと支えてこられた。そして氏は、漫画のほかに、現代詩を書き、SF同人誌『宇宙塵』にも漫画家として最も早く参加するなど、その活動は極めて多彩■本書は、漫画創作への凄絶な格闘でアルコール依存症になって行く親友・赤塚不二夫氏のことが描かれ、長谷さんがフジオ・プロを飛び出してしまうラストで幕を閉じる■長谷さんは、泣きながらワープロのキーを叩いていたのではないか。とにかく重たいドキュメント小説だ。ぜひ、読もう。
マンガ編集者狂笑録 (水声文庫)
■長谷(ながたに)氏は元トキワ荘関係者で、書評子が深く尊敬するマンガ家。現在はマンガ学を大学等で講義しておられる。
■本書は『ガロ』の長井勝一、『漫画少年』の加藤謙一、トキワ荘漫画家を育てた丸山昭、『少年マガジン』の内田勝・宮原照夫など今日のマンガブームの礎を築いた伝説的名編集者について書かれた実名小説集である。長谷氏ならではの視点で、マンガ界の熱い青春が描かれている。
氷の世界
詩人としての狂気さ、研ぎ澄まされ鋭い感性、どの曲も本当に天才の作品なわけですが、やはり「氷の世界」は邦楽史の金字塔ですよね。
恐ろしく凍えるような部屋の風景に、想起させるリンゴの赤と風に舞う叫び声、これらことばが描きだす絵は、まるでダダイズム、すさまじいインプレッションです。「氷の世界」の描写は永遠に残る前衛アートそのものでしょう。
そのサウンドもまた非常にグルーヴィでファンキーですし、改めて敬意を抱きます。70年代の日本のミュージシャン、ジャズやポピュラーシンガーなど全てこの時代の人たちの作品は、
飛びぬけて創造的なものが多いと思いますが、「氷の世界」は象徴とも言えるのではないでしょうか。
そして「氷の世界」はこのとき既にロックの頂きに君臨していると私は思います。よくロックを語ると教条主義に陥りそうですが、この「氷の世界」に関しては全てが、これぞロックだと思えます。
まあフォークとかロックとかジャンルでくくるのはナンセンスなのですが、
しかしここにこそロックがあるような気がします。これ以上の日本のロックって、、まあ数少ないでしょう。
ところで密かに「氷の世界」はプログレや昨今のロックの最前線にも及ぶ気がして、ぜひトム・ヨークなどに聴かせてみたいなと思ってしまいます。
ライヴ・イン・ハトヤ
ちょっと期待しすぎで聴いたので、一回目は「なぁ〜んだ、ソレ程でもないや」という感じでした。
しかし繰り返し聴くと、何とも言えず可笑しくて、昔の深夜ラジオの持つ「音で想像させてくれる楽しさ」
みたいな魅力を味わえます。
もともとタモリさんの芸風が好きなんですが、赤塚さんの可愛らしいキャラクターも見逃せません。
今風の笑いとは違い、大爆笑を期待するとかなり肩すかしをくらいますが、
ドサッとしながらインテリジェンスが漂う、「おやじギャグ」とは一線を画す笑いが味わえます。
「声」の持つ魅力も感じました。