須賀敦子 静かなる魂の旅---永久保存ボックス/DVD+愛蔵本
BS放送で時折放送されていた番組を観た事があり、その美しい映像と音楽に魅了されていました。
このDVDは、新編集の180分で、手許において繰り返し試聴するには程良い長さだと思います。チャプターで街ごとに再生可能。
須賀敦子の生い立ちから始まり、文学の種を育んだ街、ペルージャの美しい自然と大学への道のりの映像で、自分自身もその道を歩いているような錯覚に陥りました。
神の啓示の如く、ローマ、パンテオンのドームの中心部から差し込む光に導かれたイタリアでの生活、祈りの街、アッシジに導かれ見つけた自分自身の生き方。
ミラノで育んだ夫ペッピーノとの愛。
わずか数年で急死した夫、大きな悲しみを心のうちに孕んだまま友人と訪れたベネチアでの魂の再生、最終章はトリエステと、ハイビジョンの美しい映像が続きます。
DVD全編を通して流れるヴィオラの調べも優雅で格調高く、心癒されました。
どの映像も美しく、観光では訪れない場所、何気ない路地にほんとうのイタリアが見えてきます。
本は、G・アミトラーノ氏(吉本ばなな、村上春樹などのイタリア語翻訳)の「須賀さんの思い出」など、他にも須賀敦子にまつわる人々のインタビュー記事も読み応えがありました。
どこまでも美しく優しい、永久保存版という名に恥じないDVDだと思います。
★5個では足りないくらい。
バッハ:ゴルトベルク変奏曲
ソ連生まれのヴァイオリニスト、シトコヴェツキーが、グレン・グールドの
「ゴールトベルク」を聴いて感動し、弦楽三重奏用に編曲したのは、もう二十年以上も
前のことです。この初演版CD(以下「旧盤」)でチェロを担当していたマイスキーが、
再び弦楽三重奏版「ゴールトベルク」に挑戦しました。旧盤では、変奏の繰り返しが
一部省略されています(グールドの演奏もそうでした)が、今回は省略なしで、
丁寧で緻密な演奏がくりひろげられています。
さて、評価ですが、とても難しい。もうこれは、好みの問題になってしまいますが、
あえて言うならば、グールドの演奏が好きな方には、旧盤のほうをお勧めします。
変奏の一曲一曲をじっくり味わうのであれば新盤がふさわしいでしょうが、
グールドの演奏にある疾走感と構成力を感じさせてくれるのは旧盤です。
それから、旧盤では、シトコヴェツキーがヴァイオリンをストラディヴァリではなく
グァダニーニを使用して、三つの楽器があたかもひとつの楽器であるかのように
音色のバランスを調節していたのですが、今回の新盤ではむしろ、
それぞれの楽器の特徴がくっきりと前面に出ています。
私自身は、グールドの演奏(新旧とも)が一生の愛聴盤という人なので、
シトコヴェツキー・コセ・マイスキーの旧盤を5ッ星、今回のCDは4ッ星と
評価しますが、新旧評価が反対という方がおられても異論はとなえません。
今井信子 憧れ ヴィオラとともに
最高に感激した本である.まず弦楽四重奏団を内側から見た息詰まるような描写.音楽は言葉より直接に脳に訴えるだけ,お互いの関係は大変なのだ.それから Bartok が未完成のまま遺した Viola concerto の完成版の新しい版に納得が行かないために作曲者の息子を尋ねて Florida まで旅をする執念と行動力.今井さんはとにかく積極的で行動的で,話を読んでいるだけで気持がよい.子連れ狼などと言われるがそれがいっそ痛快なのだ.付録に付いているミニCD がまた名演で,かつ録音が良く,これがヴィオラの音と表現力だと明瞭にデモしてくれる (最後はフラジョレットだ). これほど感動的な音楽の本は稀である.そうして音楽はただ聴くだけのものではなく,演奏に参加するものだ,と力強く説かれる.その通り,と同感するが,少し彼女の CD の手持ちが少ないのも気になって来た.強く推薦.
齋藤秀雄 没後30年 証言ドキュメント+特別演奏会 [DVD]
2枚組DVDで価格の割にお得感があるが,なによりも内容がとても充実している。
斎藤氏の略歴を輝しく紹介するだけに終わらない内容で,とても高度なノンフィクションに仕上がっていると思う。斎藤秀雄氏の肉声を交えた音楽教育論をじっくりと聞くことができるのは貴重だし,このDVDの企画ならではと思う。
特に小澤征爾指揮・シャコンヌでは,その恩師斎藤秀雄氏への尽きぬことのない熱い思いが凝縮された演奏になっていた。私は思わず感極まったが,みなさんはどうだろう。
斎藤秀雄氏に興味のある方ならぜひ観てもらいたい一押しの作品です。
伊丹十三DVDコレクション 静かな生活
大げさではなく、称えるわけでもなく、ただイーヨーの美しさが心に迫ります。私は、一言の言葉が持つ限りない世界に心をつかまれるような心地でした。映画の最後に、イーヨーが「静かな生活」と言ったとき、何ともいえないきれいなものに包まれると思います。
メイキングもとてもいいです。大江光さんご本人が撮影現場を見にくるのですが、光さんのある言葉に渡部さんが泣いてしまいます。この場面は、イーヨーだけでなく出演者はじめ製作者の方たちの感受性の豊かさや美しさに、胸がいっぱいになりました。劇中に使用される光さんの曲も素晴らしいです。