おとしばなし「吉朝庵」 その5 質屋蔵/子ほめ
2000年収録の2席。
『質屋蔵』は、米朝譲りの演目。そんなに笑いの多い噺ではないが、昔の大阪の商家の雰囲気が漂ってきて、幸せな気分で聴ける名作だと思う。
吉朝はマクラなしでズバリと本題に入る。質屋の旦那と番頭の会話の中の「劇中劇」とも言える、繻子(しゅす)の帯をめぐる話が面白い。ほとんど笑いはないのだが、客席が引き込まれているのがよくわかる。吉朝の芸が実感できる所。
後半、熊五郎が出てきてからは、笑いも増えて一気に盛り上がる。落ちも秀逸。
一方『子ほめ』は、吉朝の最初の入院をネタにたっぷりマクラを語っている。今となっては、入院ネタは100%無邪気に笑えないのが辛いが、ここは、頭を収録時に戻して(あの時の吉朝は元気だったのだから)、吉朝の「漫談」を存分に楽しもう。
本題の『子ほめ』は、基本は春團治の型かなと思うが、吉朝独自のギャグも満載で、爆笑の一席。
今出ているCD5枚が、前座噺とも言うべき『子ほめ』で終わっているのは、本来もっと続くはずなのに中断した、という感じがして悲しい。
(実はこの次にもう1枚、限定販売のCD「吉朝庵・形見噺」があるが、これは文字どおり最後の高座が収録されているので、そこで終わるのは、もっと悲しい)
映像は少なくても、録音はかなり残っているはずなので、出来の良い高座を選んで、ぜひ「吉朝庵・その6」以降を発売してもらえないものだろうか。
春のかたみ
元さん産休復帰後第2弾シングルです。春のかたみ、「素晴らしい」の一言ですね。拝聴し、どこかこのような曲を、世間は忘れてしまった気がします。日本の雅で、またどこか儚い春を象徴しているようです。松任谷夫妻によるプロデュースですが、2人の渾身の力量を感じます。これからの季節、桜を眺め、大切な人を想いながら風流を感じたいですね。「あなたの胸にこの身を任せ私は死んでいこう」という詩がいいです。軽快なカップリング「Perfect」も英語歌詞に元さんの日本的な声が溶け合い、異色を愉しめます。 何せ「春のかたみ」は大事にしたい一曲です。
THREE HUNDREDS CLUB(紙ジャケット仕様)
このアルバムは、ちあきなおみがビクター時代に放ったオリジナル・アルバム『THREE HUNDREDS CLUB』(1982.7.21)の復刻版です。
初めてのCD化ではありませんが―他のアルバムと一纏めにされて『Another World』(2001.4.21)として発売中―今回の復刻で当時の音源そのままの彼女のジャズを味わうことができるようになりました。音質も良好です。
もう何年も前のことなのでうろ覚えで恐縮ですが、女優の桃井かおりが週刊誌の連載コラムの中で、“ちあきなおみのジャズを聴くと心身ともに安らぐ”といった類のことを語っていましたが、おそらくこのアルバムのことを指しているのでしょう。
唐突ですが、美空ひばりもジャズを歌っています。彼女の歌うジャズは、ちょっと辛口な見方をしますと、ジャズはかくあるべきものといったステロタイプ的なものになっているように思えます。そして世間では、そういったものを上手いと思うようです。
それに比べて、ちあきなおみの場合は、型に嵌めるなんてことは、これっぽっちも考えていないようです。ですから、べき論的な固定観念でもって彼女の歌を聴くと初めは肩透かしを食らったように感じるかもしれません。
でもジャズは、ものに囚われない自由な表現にその本質がある筈です。ちあきなおみという歌手の凄さは、こういった本質を常に見失うことなく、オリジナリティに満ち満ちた歌を創作するところにあるのです。
であるからこそ、その解き放たれた精神に共鳴する私たち聴き手の身も心も癒されるのだろうと思います。
デビュー前に、乗っていたタクシーから流れてきたひばりの歌を“上手いね”と褒めたマネージャに対して、“どこがですかぁ”と聞き返したちあきなおみ。それが中学出立ての頃だというのですから、只々唸るだけです。
ちあきなおみのたゆたうような「朝な夕な」(原曲「UNDER A BLANKET OF BLUE」)、「日曜日は風」(同「FOR SENTIMENTAL REASONS」)、「悪い夢」(同「THESE FOOLISH THINGS」)、そしてちょっとブルージィな「横顔」(同「THAT OLD FEELINGS」)、「愛の形見」(同「GOLDEN EARRINGS」)、どれもこれも素敵です。
サムライスピリッツ閃
サムライスピリッツの大ファンなので、どういうかたちであれ新作は素直に嬉しい。
だけどSNKプレイモアさん。やり残したことがあるんじゃないかな。
ネオジオを支え、1本4万円もする高価なROMカセットを購入していたネオジオROMユーザーに対して、やはり『サムライスピリッツ零スペシャル』の完全版を出すべきじゃないだろうか。ネオジオで。
サムライスピリッツの新作や、移植を見る度に零スペシャルの件を思いだします。
ネオジオ最後の花道は、やはり最後まで完全移植で幕を閉じたい。
それほどまでに零スペシャルは、素晴らしい作品だった。
メーカーさん。どうか見てたら零スペシャルの再販を検討してもらえないだろうか。完全版で。
by.未だにネオジオROMを愛してやまないバカ男より