谷山浩子ベスト 白と黒
何十年ぶりかに、とある子供番組で「まっくら森の歌」を聞いて懐かしいという話をしたところ、この「白と黒」を紹介されました。谷山浩子さんという方も、また他の曲も知らなかったので、「まっくら森の歌」の世界観は深いと思っていたのですが、まだまだ白の方なのですね。童謡風の白盤に比べ、本人セレクトの黒盤は歌詞も奇抜ながら、実にリズミカルで、不思議な独特の雰囲気に飲み込まれます。またこの二面性が、彼女の才能の豊かさを物語っていると思います。まずはこのベストアルバムで、谷山浩子さんを堪能してみてはいかがでしょうか?
どこにもないランド
藤本敦夫は、橋本一子に絶えず寄り添い、彼女の独特な音世界の構築の貢献してきた。今回は、カラードミュージック以来、久々に脇役から、主役に躍り出た。
藤本は、ギター、ベース、ドラムスとすべての楽器をこなすが、それぞれ超一流とは言えず、器用貧乏という印象を持っていた。83年末の山下洋輔トリオ解散コンサートでは、勇猛果敢にも、渡辺香津美にギターバトルを挑み、音楽で完敗・パフォーマンスで一矢報いるという華麗な戦歴も持っている。久々のボーカルは、味があるが、まあなんとかこなすという程度で、最初は聴き通すのがやや辛かった。ここでも1・5流か?と思いきや。
歌詞・アレンジが素晴らしい。絶妙の間、不思議な歌詞、多重録音の合唱、とそのポップでありながらシュールな音世界に夢中になってしまった。
『ぶっとんだ』は空回りする情念をシニカルに唄う。「笑い飛ばそうとしたら、自分が飛んだ。海の向こうに月が見えた」。絶品。
楽屋落ち的な『小川美潮』、「大好き。みしお〜。みしお〜。永遠に」共感。
『どこにもないランド』はシンセ・テクノわらべ歌。「そんなことはいいんだ。とってもいいことさ。大人になれば肩すかしさ。山芋・里芋・おっかけ忍者」小川美潮の唄。なんだかなつかしい。
『ツールドフランス』は例の橋本一子の舌足らず・フランス語が聴ける。これは、U−bxの世界。「あれっ!あれ!Allez! Alez!」
最初はおっかなびっくりだが、噛めば噛むほどおいしくなり、最後には病みつきになるという、異質な食文化に対する初体験と似ているなあ。