修羅雪姫 [DVD]
他のレビューを書いた方はみなさん「KILL BILL」でこの映画の存在を知られたとか。もう30年以上前ですから無理もありませんが、私は20代でこの映画をリアルタイムで見ました。60年代から70年代まで、ヤクザ映画全盛で数々の名作がありましたが、今は亡き藤田敏八が監督したこの映画も忘れることができません。確かに「暗い」内容の物語ですが、当時のヤクザ映画はみなそうでした。ある種の様式美とリアリティをもったアクション映画は日本映画の世界です。タランティーノというじつにユニークな映画好きがいたおかげで、「KILL BILL」が生まれたわけですが、彼が大好きな「修羅雪姫」へのオマージュとしてつくられた「KILL BILL」のいろんなシーンにこれはあれ、あれはこれといったふうにすぐ分かり多いに楽しめました。リアルタイムであるにしろ、ないにしろ、両方見てみるのも一興かと思います。映画は明治の富国強兵の時代を背景にしながら侍の時代が終わり、日本が近代国家へと変わっていくなかでのさまざまな問題などともからみながら物語が展開されますが、なんといっても梶芽衣子の表情、全体の雰囲気が素晴らしかった。近年は「鬼平犯科帳」ぐらいでしかお目にかかれなかったのですが、復讐心に溢れた冷徹な美しさの梶芽衣子は絶品です。続編はちょっと無理がありますが、日本映画にあって不朽の作品だと思います。
修羅雪姫 怨み恋歌 [DVD]
第一部の悪役は仲谷昇、岡田英次というダンディ系に深作欣二夫人の中原早苗を混ぜた、まあどちらかといえば知性系。それに対して、今回は南原宏治と山本麟一という最凶コンビを岸田森の秘密警察長官が飼い犬にするという、この上ない悪意の世界が展開します。このトリオ、後先考えないで伊丹十三の思想家にペスト菌を注射したり、それが蔓延すると、今度はペストの温床になったスラム街を焼き払ったりと、まあやりたい放題。これだけヒドイメンバーを部下に抱えると、普段は東映ヤクザ映画で絶対に自己に疑問を持たないボスキャラを演じる安部徹ですらさすがに部下の悪逆非道に恐れ慄いて「悪いことはやめようよ」というのが面白い。
この悪役軍団の前ではさすがの梶芽衣子も前作ほどの存在感を示せないのがちょっと残念ですが、まるで怪獣映画並みの悪役たちの暴走ぶりは爽快感すら与えてくれます。『怨み恋歌』というよりも『怨み濃い歌』と読んだ方がしっくり来るほど、濃い俳優さんたちの無法な活躍が楽しめる、地獄絵図みたいだけど楽しい傑作です。
由美かおる DVD-BOX
「しなの川」はDVDが欲しかった作品。
監督:野村芳太郎、脚本:ジェームズ三木、撮影:川又昂、音楽:冨田勲。
錚々たるメンバーが結集して、ただただ由美かおるを綺麗に見せることに尽力した(としか思えない)映画です。
劇画をそのまま映像化したような飛躍の多い展開ですが、主人公を日本のさまざまな風景の中で美しく撮る態度は一貫してします。
由美かおるが本当に綺麗。どんな衣装でどんな場所にいても綺麗。
それだけで星5つの価値があるのでは?
一方、「同棲時代」は、公園のブランコで「命みじかし恋せよ乙女」と歌う場面をはじめパロディ風に仕立てた点が面白い作品。
アンヌ隊員・ひし美ゆり子(こちらはカルトな場面あり)と、「帰ってきたウルトラマン」のルミ子さん・岩崎和子が登場するのも、ある意味豪華キャスト。
同棲時代 (1)
大信田礼子の歌も懐かしい。
まあ、そんなことより、大人になってからこれを読み、なにより驚いたのは、このテーマというかストーリーの余りの大袈裟さ、である。
恋愛とか結婚とか同棲が…今では考えも付かない圧倒的な重みである。なぜ、そこまで思いつめたり考えつめたりしなくてはならなかったのか、非常な断絶を感じてしまう。
時代が違うと言ってしまえばそれまでだが、痛いというのを通り越して、むしろ滑稽でさえあるのだ。もちろん、それは失礼な批評であろうが。
ある時代の若者(死語かしら)の風俗的側面を知るには一級資料的な意味はあるであろう。