コンセント [DVD]
原作は読んでいないので、映画のみの感想だが、エロティックな匂いや死臭が満載の良作だと思う。エロティックだが日活ロマンポルノのそれではなく、女性も観れるいやらしさというべきか。中原監督は日活出身だが、さすがに女性の感度・感性を捉えることが上手い。「櫻の園」も同様にエロティックだった。今回の主題はコンセントである。人間をPCのOSに例えて話を進めているので、電源=コンセントが必要だ、ということ。人間は本来、電気コードがなくても生きていける。しかし現代では誰かとコンセントでつながっていないと、人間そのものが壊れる。中原監督はこれをシャーマニズムなども引用して見事に映像化した。主演の市川実和子は本当に脆くて壊れそうな演技がいい。男は電源代わりだが、ないとスイッチが入らないカラダ、というものを綺麗に、また卑猥に演じてみせた。本作を観ると、自立心など本人が思っているだけで、実は人間誰もがコンセントを必要としていることに気がつく。ちょっとカルトだが、観ておいて損はない一作である。
コンセント (幻冬舎文庫)
田口ランディは屋久島やベトナムの紀行文・エッセイを中心に読んできたが、実は、この「コンセント」シリーズが彼女をメジャーにしたのだと最近聞き、初めて、手にした。
私はあまり小説が好きではない。
「事実は小説より奇なり」が信条で、太宰治や「ワイルドスワン」「沈まぬ太陽」のような、事実がかなり大きな部分を占めるものしか、パワーを感じないのだ。
そんな私が、この「コンセント」にはパワーを感じた。彼女の私小説的な部分がベースになっているからかもしれないが、まさに「繋がった」感じがした。
男性作家の手により、どこか女性には空々しい感じで描かれる事の多いセックスシーンも、彼女の本の中で、女性の説明の付かない衝動的本能として、ためらい無く等身大で描かれている。
また、人間の精神やその変容が、コンピューターのOSやディスクやアプリケーションに喩えられ、説明解説されているのも今日的だろう。
普段PCに接している人ほど、PC用語に喩えられた彼女の小説は身近なのではなかろうか。
また、金融に対しての、主人公の感覚も、非常に金融が生き物のように感じられ、興味深かった。
そういったディティールの面白さもあるが、やはり、何より、小説全体が中だるみ無く面白いものだった事が第一。3部作を読みきるのが楽しみになってきた。
ひかりのあめふるしま屋久島 (幻冬舎文庫)
この本は屋久島がメインのため、文化や知らない土地のワクワクよりも、自然と向かい合うことを楽しめます。
1人で旅行をする私にとって、最高の贅沢だと思いました。
自然と向かい合うことは自分と向かい合うことで、そこでなにかを感じて発見する。
単純だけど、都会ではなかなかできないことです。
そして、著者が屋久島の自然を大絶賛しているため、その景色を実際に見てみたい!と思いました。
「もののけ姫」の森がそこにある・・・と。
屋久島へ行く人の大半が、メインは屋久杉ですよね。
そこを、もっと深くまで知って体感した著者の気持ちを、少しでも知りたいなぁと思える作品でした。
アンテナ スペシャル・エディション [DVD]
内容だけを見ていると、目を覆いたくなる部分、耳を塞ぎたくなる部分が多くありそうですが、情緒というものが大切にされていて、登場人物たちの心の変化が美しく描かれているので、SMルームでのシーンや自傷シーンなどもみやすいです。バックに流れる曲、要所に出てくる鏡越しの風景…、色んなものが合図となって、作品の中に見ている私を引き込んでいきました。重要となる、SMルームでのマスターベーションを強要されるシーンは、主演・加瀬亮さんの圧倒的な演技力によって、リアルかつ美しいものになっています。主人公の心の鍵とも言える女王様の言葉に、何度見ても私は泣いてしまいます。
コンセント [DVD]
田口ランディの小説第1作を映画化。ランディさんの実体験を下敷きに、餓死した兄の真実を巡って、心理学、シャーマン、オカルトが織り交ぜられた絶望と救済の物語となっています。
小説に比べるとどうしても軽くなってしまいますが、主人公ユキを演ずる市川実和子がとてもハマっていていいです。また、特殊清掃会社の清掃プロフェッショナル役の斎藤歩が、出番少ない役ながら劇場映画デビューとは思えない存在感でした。
エッチなシーンも多いです。でも、それらがサービス映像というわけではなくストーリーにしっかり導かれ、死の絶望に対する生に向かうエロスを感じるのが、いいところです。
とはいえ、原作からするとちょっと中途半端な映画化かな…ともったいなく思うのも正直な印象でした。原作を読んだ人にはお勧め。