死霊(2) (講談社文芸文庫)
食う食われるに対して改めて考えるキッカケになりました。蝿、蚊などを安易に殺さなくなった自分がそこにいました。全ての生き物が意識を持っていると実感した時、ジャイナ教の思想の断片を辛うじて理解出来るのではないでしょうか。
死霊(3) (講談社文芸文庫)
未完に終わった『死霊』ですが、もう続きが書かれない以上、完結した作品と
考えて読んだ方が良いでしょう。ドストエフスキーの『悪霊』の影響を強く受けながらも、独自の埴谷美学とでもいった奇怪な観念に彩られたこの作品は、他に類のない小説としていつまでも読み継がれるはずです。
死霊(1) (講談社文芸文庫)
言語に対する偏愛的執着、ドストエフスキー好き、観念好き、独善性、これらの傾向はみな詩人の資質であり、それとロシア革命前期の白手袋にシルクハットのナロードニキの混合が埴谷雄高氏の文学的イメージである。わたしは氏を称えているのではない。胡散臭いといっているのだ。
明治生まれには案外とこの型の作家が多い。空回りの大家という意味だが、代表は西の横綱が稲垣足穂氏であり、東はこの埴谷雄高氏であろう。前頭筆頭は云わずと知れた三島由紀夫氏である。だからけっして埴谷氏はマジメにうけとるべき作家ではなく、たのしく読めばそれでいいのだ。じっさいわたしは約四十年間、時々取り出してはたのしくこの小説を読ませて頂いている。昔はハードカバーしかなく重たくて苦労したものである。今はこの文庫があるから寝っ転って読める。文庫化してくれた講談社に心から感謝しております。
似たような小説に松永 延造氏の「夢を喰う人」 というのがある。大正期だがたいへんブリリアントな作品である。「死霊」が好きなひとにはぜひ一読をお勧めしたい。
アルヴォ・ペルトの世界~アルボス
『断続する平行』が聞きたくて、購入しました。これは、以前NHKで放送されていましたETV特集『埴谷雄高独白 死霊の世界』で蟹江敬三が同作品を朗読しているシーン流れていたのですが、シンプルなフレーズが繰り返し繰り返しオルガンで静かに流れていき、静謐・寂寥を感じさせつつ不気味さも感じさせる。まさに『埴谷雄高 死霊』の世界を音楽で体現しているなと思いました。というより、NHKはよくぞこの曲をBGMに使ったな、他には考えられないな、と感心しています。