NINE DIRTS AND SNOW WHITE FLICKERS [DVD]
以前の彼女とはあきらかに違う。表現が等身大になった。声がすごいとか、歌がうまいとか、そういうこと以上に、説得力のある歌手になったと思う。彼女はすでに「育つ雑草」で等身大の歌手への道を歩み始めていたが、それがこのDVDの歌で、はじめて完成されたのだと思う。
そしてこのDVDで聴ける彼女の歌声は、いままでリリースされたどのCDよりも、どのDVDよりも素晴らしい。現在のところ、鬼束ちひろを聴くなら、このDVDをまず最初に買うべきだと思う。
わたしはこの一ヶ月のあいだ、このDVDを毎日のように、繰り返し聴いている。彼女のCDも以前のDVDも全部もっているが、こんなに繰り返し聴いたことはなかった。それはほかの歌手の場合もそうだ。それほど密度が濃く、彼女が成し遂げたことが素晴らしいからだ。何度聴きなおしても、感動する。そして興趣尽きない。
この作品は後世に残るとおもう。騙されたと思って聴いてほしい。このうえなく美しく、時代を超えていて、そのうえ、歌手本人が、いまにも倒れそうなほどぎりぎりのところで、身体を張って打ち込んでいる。そして自分のなかから最良のものを引き出している。その姿にも感動するだろう。
こんなに素晴らしい歌手がいま日本にいるんだということ。この事実は語り伝えられるだろう。このDVDがいかに傑作であるかということが、これから先さらに認識されていくだろう。評価はますます高くなっていくことだろう。その最初の目撃者であったことを、わたしは誇りに思っている。
"ONE OF PILLARS" ~BEST OF CHIHIRO ONITSUKA 2000-2010~
鬼束ちひろさんの公式サイトで確認しましたが、先に発売された、
『the ultimate collection 』や『SINGLES 2000-2003 』
は、DISCOGRAPHYのどこにも載っていませんでした。
本作は鬼束ちひろさんにとって初めてのベストアルバムです。
ブックレットには歌詞だけじゃなくて彼女のこれまでの軌跡も載っています。
ULTIMATE CRASH ’02 LIVE AT BUDOKAN [DVD]
2007年5月、2年7ヶ月ぶりに復帰を果たした鬼束ちひろ。
彼女の魅力を存分に伝えるライブ盤が、この「ULTIMATE CRASH ’02」である。
まず、音質が良い。クリアだし、臨場感もうまく伝わるバランスになっている。
映像にもセンスを感じる。アングルの組み合わせなどが絶妙なのである。
しかし何より、それぞれの楽曲と彼女の歌声のすばらしさだ。
声は後半になるにつれて伸びやかさを増し、表情もやわらかになってゆく。
曲のメッセージもこちらに響いてくる。
前半の「infection」、中盤の「Tiger in my Love」、アンコールの「月光」は、特に見所だ。
ファンはもちろん、彼女に少しでも興味を持った人ならば、買う価値は十二分にある。
曲の幅が広いぶん、「CRADLE ON MY NOISE」よりもちょっとだけおすすめ。
月の破片
このエッセイを読んでいて、一番感じたことは、彼女の魅力はそのクールさだということ。
エッセイでは、学校でいじめがあったこと、自殺未遂のエピソード、過緊張で人間嫌いな自分の性格、衝動的で常に不安定な自分など。。。その「内容」面では、かなり“重い”と思われることが含まれています。しかし、その「語り方」は、なんともクールで一歩引いた視点から書かれていて、時にユーモラスに軽やかに表現しています。たとえば、自殺未遂のエピソードについては、「私はそう簡単には死ねないんだなと呆れた。それがわかったから、これからの人生は買えるだけのシャネルを買って生きてやる!死にたいという欲求が、物欲とさらなる生命力にシフトした」といった調子です。
そして、こういうクールさや、一歩距離を置くニュアンスは、彼女の音楽にも現れているのだとわかります。歌詞については、「私自身は一歩引いて全体を眺めているような、そんな感じ」と言っているし、自分の書いた曲についても、「自分の書いた曲は、自分の子どものようだと言うミュージシャンもいるけれど、私はそうではない。・・・(良い悪いは)『あとはそっちで判断して』となる」とはっきり述べています。
僕は、彼女の音楽のファンですが、このエッセイを読んで、彼女の音楽のどういうところが好きなのか、再確認したという感覚になりました。
彼女の表現は、作品(楽曲、ライブパフォーマンス)と作者自身(作曲者、歌い手)との間に“距離”があるというタイプの表現だと思っていました。つまり、内容面では非常に重かったり強烈な内容の作品でも、彼女は単に“表現しっぱなし”なのであって、共感や共鳴を強要する感じが一切無い。逆にそのクールさゆえに、聞き手は安心して音楽に身を委ねられる。ここが最大の魅力だと思います。
こういうタイプの表現者は、日本にはあまりいないのではと思います。世界に対する見方、日常や過去の出来事に対する見方、そして(音楽での)表現の仕方、そのすべてがクール。この徹底振りは痛快とさえ思います。しかし、このクールな態度は同時に、“孤独”を引き受けることでもあると思います。その強烈な孤独が、あのような凄まじい音楽を生み出す原動力になっているのではと思えます。
鬼束ちひろ・・・ただただクールでかっこいい、そして孤高の表現者!それ以外に何を言えようか!
剣と楓
正直新曲、青い鳥も含めて聞いてきましたが、何か違います。インフェクションや月光、エブリホーム、シャイン、流星群、漂流の羽根など、あの美しくて切なさのある鬼束ワールドの音曲があまり無かったのが凄く残念です。 レビューには原点復帰と書いてあっただけに、正直期待しすぎてしまったのもあったのでしょうが、曲調が段々変わってきてるのが正直残念です。 惑星の森などが以外に良かったから尚更今回のアルバムもそれ系の哀愁漂う美しい曲を1、2曲は期待したのですが、残念ながら正直聞いていて良いなぁーと思う曲はありませんでした。 あえてまだ昔の名残が残ってるとすれば、トラック2の夢かも知れない、トラック4、IRIS、そしてトラック12の琥珀の雪ぐらいでしょう。 後の曲はチョッと何かが違います。 悪い意味では無いですが、やはり初期復帰と言うからには、月光やインフェクション並みの曲一曲は聞きたかったです。 いづれにしても、今はゆっくりこのアルバムを聞いて、自分的にはこの次のアルバムに期待したいと思います。 悪くはない作品だと思いますが、やはり原点復帰の目線で見ると、少し違う気がします。 進化する面ではこう言う曲の変わりようはありかもしれませんが、やはりまた、昔のような王道バラードをファンなら聞きたいと思う人は多いと思います。 自分は何時か、初期の代表曲のような曲とまた出会える事を信じて、あえて評価は辛口の3で。 でも悪い作品では無いですので是非、一人一人に聞いてもらいたいアルバムです。 あまり間が空かないうちに、次のアルバムや新曲が出てくれると嬉しいですね。