吉里吉里人 (上巻) (新潮文庫)
東北の一小村、吉里吉里村が突如、独立を宣言した! 初めは悪い冗談だとして真剣に受け止めなかった日本の政府・マスコミも、矢継ぎ早に打ち出される吉里吉里国の方策の前に徐々に色を失っていった。日本政府は総力を挙げて、吉里吉里国を潰そうとするが・・・・・・
ひょんなことから吉里吉里国初の入国者となった三文文士、古橋健治を軸に緻密かつ荒唐無稽に語られる、抱腹絶倒の騒動劇。スリル、サスペンス、アクション、ミステリ、ドタバタ、ギャグ、下ネタ、お色気と娯楽小説の要素を全て盛り込み、なおかつ骨太の論理で日本国の愚昧と国民国家の幻想を鋭く穿つ、超弩級の迫力を備えた大作。時にコミカルに、時にシリアスに、作者の胸につかえていたものを全て吐き出した感のあるこの小説には、井上ひさしの真骨頂が表れているといえよう。
1981年、第2回日本SF大賞を受賞。また1982年、第33回読売文学賞(小説賞)を受賞。
作者によると、小説の中で起こる時間と、読者が読んでいる時間が一致するよう計算したため、大長編になったらしい。物語の中では36時間進行するのだが、36時間かけると丁度読み終わる計算だとか(笑)
こいのうた
3ピースバンド、GO!GO!7188の3rdシングル。
ベタと言ってしまえばかなりベタベタな、ラブ・バラード。
しかし、ここまで忠実に片想いする女の子の気持ちを描いた詞に、
自分自身の姿とシンクロしない女子なんていないんじゃないだろうか。
それくらい、信憑性のあるラブ・バラード。
だからこそ、ファンからの人気も高いんじゃないかな。
この曲を聴いた瞬間・・・「なにコレ!」って感じでした。
“共感”ってこういうものか、みたいな。
ストレートに入ってくる歌詞と、真っ向勝負なロック・サウンド。
何度聴いても飽きがこなくて、惚れ惚れします。
ここまでベタでストレートに恋心を描いた曲ってGO!GO!7188の中ではあんまりないと思うから、
「この曲から好きになった」って人もいれば、「この曲だけは好き」って人も居るんじゃないかな?
とにかく永久に廃れないラブ・バラードです。
カップリングも合わせて名盤。
『西部』では、GO!GO!7188らしい“弱い自分と強い自分との葛藤”の世界が描かれていて、すごく大好きな一曲。
GO!GO!7188の曲って、サウンドはとにかくロックだし、めちゃめちゃ勢いがあるんだけど、実際蓋を開けたらかなりヘヴィーで繊細な感情で溢れかえってたりするんだよね。
GO!GO!7188の楽曲は、そういうところがすごく好きだな。
で、とにかくこのシングルで貴重なのは『ひょっこりひょうたん島』のカヴァー。
こいつが死ぬほどかっこいい!
GO!GO!7188はカヴァーアルバムなんかも出してるけど、
そこに収録されてるどの曲も、この3rdシングルに収録されてる『ひょっこりひょうたん島』には敵わないです。
日本語教室 (新潮新書)
母校の上智大学で行われた講演をまとめたもの。話し言葉なのですらすら読め、井上氏の話術も楽しめる。
講演では、文章と違ってつい脱線したり脇道にそれたりすることがあり、そこに面白さもあるのだが、それが社会事象に関することになると、「そーかなー」と思わなくもない箇所があった。それを割り引いても面白くてためになる本ではある。
本論のなかで、興味深かったのはつぎのようなところ。
・第二次大戦中、スペインは中立国だったのに、なぜ国連公用語にスペイン語が入っているか。
・同じ「畑」なのに、「茶畑」(ちゃばたけ)は濁るのに、「田畑」(たはた)が濁らないのはなぜか。
・斎藤茂吉の「最上川逆白波のたつまでに〜」という歌はどういう点が素晴らしいのか。
・「象は鼻が長い」というときの主語は「象は」か「鼻が」か(大野晋理論の紹介)。
・日本人は本当に苦しいときは、「いー」と言わずに「うー」と言う。なぜか。
以上、わかりますか?
脇道にそれた話でいちばん面白かったのは、「ソ連のマッチは出来が悪くて、ソ連最大のマッチ工場が全焼したとき、焼け残ったのはマッチだけだった」というロシア・ジョーク。
本書の巻末には「著書・単行本目録」が掲載されているんだけど、そこに代表作の一つ『吉里吉里人』が入っていない。なせだろう。うーん。
この本で関心をもった方は、『私家版・日本語文法』『ことばを読む』『私家版・文章読本』などをどうぞ。「日本語の勉強」としては、これらの本のほうがおすすめです。
天保十二年のシェイクスピア [DVD]
シェイクスピアのエンターテイメント性と井上ひさしさんの言葉の面白さがばっちり噛み合って、どちらもより濃縮されてる感じがしました。この濃い世界を、蜷川さんと豪華キャストが体当たりで具現化する様は圧巻。歌に踊りに、濡れ場に殺し場。4時間を越す上演時間の間、息もつかせぬ迫力です。観るときは、舞台にならって仲休みを入れた方がいいかもしれません。。
この人から受け継ぐもの
チェーホフ論が面白い。
チェーホフは44年の短い生涯で目覚しい演劇革命を成し遂げた。
一に、主人公という考え方を舞台から追放した。
二に、主題という偉そうなものと絶縁した。
三に、筋立ての作り方を変えた。戯曲から物語性を追い出した。
こチェーホフから、井上さんは多くのものを学んだのである。そして次のような考えに至った。
「ちゃんとした喜劇作者は、普通の人達の生活を凝視する。喜劇の題材は、普通の人達の日々の暮らしの中にしか転がっていないからだ
さらに彼は(その度合は様々であっても幾分かは)社会改革家にならざるを得ない。自分を含む普通の人たちの生活を見つめているうちに
たいていの人たちが、たがいに理解し合うことを知らないためにそれぞれ物悲しい人生を送っているという恐ろしい現実を発見するからだ」
「喜劇作者は社会改革家にならざるを得ない」という命題にはぼくは賛同できないが、
この考え方が井上さんの基本姿勢だったことがよくわかる文章である。