LAW(ロウ)より証拠
一般読者向けに法律より証拠が重要だというならば、やや羊頭狗肉というか、タイトルと中身が一致していないように思う。
たいていの人は、そもそも法律がどういう制度になっているかすら知らないから、どのような証拠が必要か以前の問題として、自分が巻き込まれたトラブルを把握するために法律を調べることが必要である。
したがって、本書の内容は、「証拠よりLAW」という点がベースになっている。
本書の勧善懲悪のストーリーはおもしろいのだが、そのドラマ性が余計に誤解を生むような気がする。
自分で法律の勉強をするなり専門家に聞くなりして、状況を把握できた後の段階が、本書の言う「LAWより証拠」である。
法学部の学生なり資格試験の受験生なりが本書を読むと、いろいろと「目からウロコ」の発見があるはずだ。
「「成年後見」と「任意後見」のエアポケット」などは、制度の暗記にとらわれていると、考えもつかないだろう。
本書は一般向けの体裁をとってはいるが、一般人が本書から得られることは、まずは専門家に相談して状況を把握しろ、というくらいで、いきなり証拠集めに動いても、生兵法は怪我の元になりかねない。
証拠は、制度が定める要件を満たすように集めなければならないからである。
むしろ、法律学習者が知識を補強するための実務本として読むほうが何倍も効果を発揮すると思う。
ひとつ気になった点は、本書に出てきた事例は安いものが多い。
そのような安いトラブルを著者に相談して、ペイしたのだろうか。