リアルタイム・シンガーソングライター(DVD付き初回限定盤)
僕は40を過ぎた。経験を積んだ。10代、20代だったら空々しく響く言葉も今では幾らかは他者に受け止められるだろうか。書き始めは、ジョン・ランドーが「私はロックンロールの未来を観た。その名はブルース・スプリングスティーン」と発信した声明を引用させて欲しい。そう。塞ぎ込んだこの国で、馴れ合いのまま沈んでゆく音楽シーンで「僕はロックンロールの未来を観た。その名は高橋優」
現在、彼をプロデュースしているのは箭内道彦だ。春先までトップランナーの司会だったことよりも箭内道彦で頭に浮かぶのは、今や知らぬ音楽ファンなどいないであろう合言葉『NO MUSIC,NO LIFE』。彼は高橋優を「リアルタイム・シンガーソングライター」と称していた。このキャッチフレーズが本作のタイトルとなっている。
国難の時代に僕が聴きたいのは『見上げてごらん夜の星を』ではなく、高橋優の『風前の灯』(僕らの平成ロックンロール)だった。彼は自分の水筒を他人に渡して、地面の水たまりをすすりながらそれでも希望を歌っている。アンデルセンの裸の王様は子供に笑われたが、高橋優が同じように歩いて笑われたとしても僕は彼と歩きたいとさえ想う。
こんな言い方もしてもいい。例えば、目の前にあるルーレット。これで負ければ一文ナシだ。それが今夜なら、僕は最後に賭けるのは、残りのチップを手の平に集めて『高橋優』にベットする。決して誇れる人生ではない、少なからず粗相もした。でもせめて最後ぐらい、希望に賭けてみたい。のちの世界を彼に託してみたいのだ。勝っても、そして負けても、悔いを残さない為に。
※以下、独りよがり全曲レヴュー。
【終焉のディープキス】
キスという少年少女・紳士淑女の仄かな憧れを引き裂いて、ブチュ〜じゃなきゃ意味がないと演奏をたたみかけながら迫る歌。未だ見ぬお相手に対してだけではなく、全世界に対して「オレはその他大勢ではいたくない、体裁を整えて上手くやってこうとは思わない、先が読めない人生を往こうゼ」と狼煙をあげる、冒頭に相応しい歌。
【素晴らしき日常】
恵まれた国で欲しい物は何でも手に入る暮らしに溺死しそうな者を救う手段として、地球上の札束をシュレッダーにかけてみないか?と提案しつつも、でもなぁみんなまだ頑張ってみようゼと結ぶ1st シングル。個性を遠ざけ統計を手繰り寄せる大衆に「素晴らしき日常だな」と毒づきながら、そのもう片方で、だけどオレたち少数派だって「素晴らしき日常だよ」と掬い上げる。程よく踏んだ韻も巧みな温かな曲。
【福笑い】
一見そこらにあるのようなラブソングだが、聞き易さをキープしながらも巧みに高橋らしさが紛れ込んだ3rd シングル。特出すべきは「あなたは楽しんでいるか?幸せだと胸張って言えるのか?それを問うことこそが隣で唄っている僕の全てなんだ」と紡がれる想いだろう。なぜ高橋が唄うのか?誰の為に唄うのか?を、彼は真っ直ぐに君のミットに投げている。
【メロディ】
自分の青臭さをてらいもなく前面に打ち出している。大切な人に向けられた私信からなる歌であろう。しかしこれ以外の10曲の独自性に囲まれてあるだけに、口ずさみ易いメロディは使い古された言葉と共にリアルに響いてくる。
【希望の歌】
良いことなんてない何一つない毎日。それでも自分の内の「一つ」を信じてそれを続けてゆけば願いは叶う、時代は変わると説く、自分と他人に向けた現在進行形の応援歌。ヘビーな現状を重いビートに乗せることで表現し、そうすることは「みんな頑張ろう」と表面的に繕うそこらの歌謡曲を突き放してどこかに置いてきぼりにする力をまとう。
【靴紐】
靴紐を結ぶときってどんなときだろう?…いつもとは違うステージに立つとき?腹を据えて走ることを決めたとき?大切な誰かに会うとき?ほどけたとき?たとえそれがどんなときでも人が凛とする瞬間であることに変わりはない。結局別々の道を選んだ僕ら。でもそれぞれの路上で結ぶ靴紐に託す想いはさ、ほどけないよね。
【サンドイッチ】
コンビニに入る〜コンビニを出るまでを歌っている。恋人も、親友も、あなたも、登場しない。すれ違う客、商品、店員、子供、その母親、つまり登場人物は僕やあなたが繰り返す「日常」だ。たったこれだけのことをサンドイッチにはさんで歌っている(だが、この歌で泣いてしまうのはきっと僕一人じゃないはずだ)。もはや彼に書けぬ日常などないのではないだろうか?
【ほんとのきもち】
何を見たのか?何が起こったのか?どんな事情が?真意はどんなだ?何をしたんだ?何をしてんだっけ?具材は?何を食べた?どんなことが待ってる?何が出来る?何があったの?どんな事情?何を言われ、何と返す?何が可笑しい?何が恐い?君のキスには隠されていた?君は今どこで何を?…湧き出るのは不透明で不安定で不確かな想い。「握手しているこの人は誰だ?」とファンをも疑う高橋のただ一つ確かなもの、信じられるものとはいったい何なのか?魂を叩きつけた2nd シングル。
【虹と記念日】
前曲からは一転「そー深く考えないでもいいさ、とにかく傍に居てくれりゃいい」と諭しながら、かけおちしてもいいんだと誘う“半分冗談半分本気”を見事に表した楽曲。「笑ってよ」とおどけながら、なだめながら、でも「笑えないならそれでもいい」とするスタンス。だって雨雲から覗く木漏れ日だって笑顔。虹がかかって歩き出せば立派な記念日だから。
【現実という名の怪物と戦う者たち】
「どんなに辛かったか、淋しかったか。君と話したら救われた。未だ怪物は迫り来るけれど。出会えて良かったと心底言える人々が少しずつ増えて来た」これはまさに高橋が路上で唄い始めて以降、歯車が動いて何かが好転したことを記した“途中”表明。ファンや関係者や仲間と支え合うだけではなく、卑屈をぶつけ合うことで、独りじゃ行けない場所へゆけると発見した感動を伝える歌。
【少年であれ】
死ぬなよ、と声がする祈りの歌。
仲里依紗フォトブック『anno1989』
仲さんのスウェーデンへ出発から始まります。飾ってない仲さんが見れます。中ほどにベッドにキャミソールの写真がありますが胸の谷間もみれますし、表情も大人びてとても好きです。
全体的にすっぴんに近いんじゃないかな?
リアルタイム・シンガーソングライター
メジャーデビューSg.「素晴らしき日常」が膨大な数のパワープレイを獲得するなど、ズッシリと本物感充分な手応えに耳の肥えた音楽のプロの心まで久々にソワソワさせている(と推定される)、高橋優クンのこれが1st.Al.です。
私は所謂“DVD付初回限定版”って奴が苦手でコチラを購入しました。別にPVなんて何時でもつべで観れるし…なんてスカしてるのではなく、単に収納場所を節約したいだけ…そんなら音源DLすりゃ好いじゃん…それが出来ない音盤が手元に無いと心が落ち着かない43歳…なのですが。
そんなゴタクはともかく、同世代の“かつて音楽バカだった”皆様にお伝えしたい。彼こそは…アノ頃のように…RCのようにLAUGHIN'のようにセカンドアルバムまでのBLUEHEARTSのように…持ってる楽器はアコギだけれど…何か魂をジリジリと熱して落ち着かない気持ちにさせてくれるホンモノな存在なのです。
どうか聴いてみてください。
会社で難しい立場に居られるのかもしれません…お子様との関係に胸を痛めておいでなのかもしれません…お時間が無ければ、せめて彼の「福笑い」だけでも聴いてあげて下さい。
聴いたらきっと
その日は昨日までと絶対的に違う1日に
彼は拓郎ではありません。彼は尾崎ではありません。彼は長淵ではありません。
彼は高橋優クンです。
心を
持っています