邂逅の森 (文春文庫)
まるで息遣いが聞えてくるような、狩猟の場面。大自然の中で繰り広げられる人と獣たちの命の攻防。読んでいて、思わず息を呑みます。自然の大きさに比べたら、人の何とちっぽけなことか!しょせん、人も自然の一部でしかないと、思い知らされます。「マタギ」としての富治の人生、そしてその彼の壮絶な人生をも上回る、富治の妻イクの人生は、読む者に感動を与えます。富治の問いかけに対する「山の神」の答えは・・・。イクはすでにその答えを知っていたのかもしれません。場面、状況の描写、人間の心理描写、内容の面白さ、どれをとっても申し分のない作品でした。
SWITCH vol.27 No.12(スイッチ2009年12月号)特集:永遠のこども[尾田栄一郎×桜井和寿]
ワンピースの原作者尾田と映画版の主題歌を担当することになったミスチルの桜井。両ビッグネームの対談は読むだけの価値あり。
漂泊の牙 (集英社文庫)
東北の動物、歴史、なによりも人をテーマに書き続けている作者の比較的初期の作品。
絶滅したニホンオオカミや漂泊の民サンカの歴史がからみ、起こる事件は陰惨なのですが、ミステリー仕立てなのであまり抵抗なく読めます。ミステリー仕立てなのは良いのですが、最後の結末はう〜ん。なんで最後にそこを撃つかなぁ。そこまでの盛り上げ方、サスペンス的要素が良かっただけにちょっと残念。