やさしさで溢れるように
「君のすべてに」、「素直になれたら」ブレイク後のシングル。
個人的には、前作はJUJUのボーカルの良さがあまり引き出されておらず、失望感もあり、「奇跡を望むなら」が音楽的にはJUJUにとってのピークにるのかなあと正直期待していなかったのだが・・・。
この曲の叙情的なメロディは圧倒的で、JUJUの慈悲溢れるボーカルが耳を、身体を包み込み、完全にヘビーローテーション状態になってしまいました。
着うたほど、CD自体は売れていないのが寂しいですが、もっと評価されていいシングルではないかと思います。
カバーブーム全盛でつまらないカバーにがっかりすることが多い最近ですが、カップリングのカバーも単なるカラオケになっていないのも、流石。
ホルスト:惑星
この『惑星』では、バターを使っておらず、その分すっきりした、まるで和食のような風味を味わうことができる。十九世紀的なロマン主義のこってりした濃厚さや、大仕掛けの大スペクタルを期待するむきには適さないかもしれないけれども、二十世紀後葉の宇宙時代にはむしろこちらの透明感のほうがふさわしい。しかしこの演奏には透明感だけでは説明できない風合いがあって、とくにあの「木星」第四主題の美しいテーマは、なんと「君が代」にも通じる味わいが感じられて、やはり和食なのだ。私は別に右翼ではないが、これには感動すらおぼえた。そこがインターナショナルな指揮者、小澤征爾の失わなかった本領だし、真のよさだし、たいしたものだと私は思う。
新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)
君子がいくら善悪を峻別し徳の高い行いをしても、
それで民衆を治められるとは限らない。
君主(皇帝)は、善悪ではなく、人間性を観察して他人の行動を予測し、
政権が維持できるよう(民衆を長く、良く治められるよう)振舞うべし。
鋭い人間観察に基づいた、君主が備えるべき資質についての論考をまとめたもの。
冷徹な格言などの印象が強かったが、
あくまでも、現実的な人間を踏まえた論考なので、
冷たいとか温かいとか善いとかではなく、
こう振舞ったら(人間は)こう動くだろう、だからこうした方がいい、という話。
人間観察部は、現在にも大いに通じるところがある。
(というか、人間が変化できていないというべきなのか・・。)
翻訳もとても読みやすかった。
日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)
「指導力を発揮できる政治家がでてこない」「官僚のセクショナリズムが弊害をもたらしている」「政権交代が起きない」「政治がどこで行なわれているか見えてこない」「政官財が癒着している」など、日本の政治に対してしばしば批判されているこれらの問題に対して、本書は正面から答えようとしている。
この本の価値を評する際に、「日本の政治問題は議院内閣制に起因するものだという誤解を解き、本来の議院内閣制から逸脱した『官僚内閣制』という日本独自の体制があることを指摘した」という点を高く評価している例が多く見られる。しかし、筆者のこのような言説は全く目新しいものではない。むしろ、政治学の古典的な理論である。佐々木毅の『政治学講義』(1999年)でも、第2部第3章第2節「議会制と大統領制」(p.p.166-172)にて同様の指摘がなされている。
本書の最大の特徴は、第7章の末尾で筆者が書いているように、「古典的な政治制度の活用がいかなる意味を持つのかを、現状分析を通して探求した」(p.236)という点にある。その現状分析をするうえで貫いているテーマが「官僚内閣制」である。この官僚内閣制を軸にして、現在の日本の政治制度がどのように規定されているか、どのように運用されているかを明らかにしている。官僚内閣制によって起こる問題が、責任を負うべき権力の核の不在である。
もっとも筆者は、近年の行政改革や選挙改革によって、首相の地位が強化されたり二大政党制に近付いてきたため、これまでの日本政治の問題点が解消に向かっていることを示唆している。今後の日本政治の展望を見るうえでこれらの変化は軽視すべきものではなく、日本の統治構造が再編されようとしているのだろう。
以上の問題について本書は実に雄弁に語っており、読者の理解を促してくれるだろう。だが、疑問に感じる部分がないわけではない。特に第7章でなされている提言は、そのまま素直に受け取れない。ここでは参議院の役割の大胆な変化や、司法改革、国民の政党意識の醸成などを進めるべきだとしている。これらの提言は、そのまえの議論から大きく外れており、たいした考察もなされないままに、結論が導かれている。全体的に第7章は、内容の現実味が薄れているように見受けられた。
NHKクラシカル 小澤征爾 ベルリン・フィル 「悲愴」 2008年ベルリン公演 [Blu-ray]
2008年1月、小澤の恩師であるヘルベルト・フォン・カラヤン生誕100年を記念して催された、ベルリン・フィルのコンサートから、小澤征爾指揮のチャイコフスキーの「交響曲第6番 悲愴」を収録。ハイビジョン映像の高画質と5.0chサラウンド・リニアPCM(96Khz/24bit)の高音質により、小澤征爾とベルリン・フィルの熱演を、圧倒的な臨場感で再現するしている。
小澤のみならず、オーケストラのメンバーも感情移入たっぷりの名演である。
チャイコフスキーの「交響曲第6番 悲愴」はカラヤンが大好きで、また、得意としていた曲であり、リハーサルでの小澤の話やエピソードは小澤ファンにはたまらないものがある。