タクシードライバー コレクターズ・エディション [DVD]
大学に入りたてでまだ元気があった自分は「奇妙な映画だなあ」と思いました。
しかし…いろいろ社会人として精神的にも肉体的にも参っている状態で観ると、やりきれなくなります。
この映画には(わたしのような)ロクデナシしか出てきません。デ・ニーロはただのダメ人間だし、ジョディ・フォスターは商売女だし、シビル・シェパード、ハーヴェイ・カイテル…ああ。
1976年アメリカというどうしようもなく病んだ社会の大きい、スクリーン大の鏡ではないでしょうか。ハッピーな方はこれを唾棄するでしょう。弱っている方(わたしもそうですが)がこれを観たら…自殺したくなるかも。
ヒーローもヒロインも出てきません。ヤケクソになった男が殺人を犯しヒーローに『祭り上げられる』映画だけ…といってしまったらそれまでなのですが、仕方がない、ああ、それのみの映画なのです。
ですから観客を選ぶでしょう。自分に大いに自信のある方は観る必要はございません。ないかたは…これを観て等身大のご自身を、悶々としながら見つめなおしてください。
ホテル・ニューハンプシャー【字幕版】 [VHS]
何度見ても泣ける場面があります。弟との近親相姦、背の伸びない妹、ホモの兄、熊のぬいぐるみに隠れるスージー(ナスターシャキンスキー)、飛行機事故、父の失明…暗い話題ぱっかりでも、強く生きようとする人々の不思議な雰囲気の映画です。
タクシードライバー 製作35周年記念 HDデジタル・リマスター版 ブルーレイ・コレクターズ・エディション 【初回生産限定】 [Blu-ray]
この映画は昼と夜だ。一見飾り立てた闇とネオン渦巻くニューヨークのもうひとつの顔。その中で蠢き、もがくしか出来ないトラヴィスは昼に生きられない哀しい男。勿論シビル・シェパード演じるベツィが昼でジョディ・フォスター演じるアイリスが夜なのは言うまでもない。ベツィに惚れたのはトラヴィスの昼に対する憧れを象徴的に表している。体を鍛え、銃を手にしたトラヴィスは「You talkin' to me?」の有名なセリフの通り自信に満ち溢れたが、結局その自信も光輝く昼にはもろくも打ち砕かれる。やむなく彼は汚物を浄化すべく夜の街へと銃を向けるのであった。彼の功績はアイリスを昼の世界へ戻した、これだけであるが人に誉められた事など無いであろうトラヴィスはアイリスの両親からのこの上ない感謝の手紙に少しは心が潤ったのではないだろうか。ラストのベツィをタクシーに乗せるシーン。「おいくら?」と尋ねるベツィににっこりと頷き、「So long!」とだけ言って走り去るトラヴィス。言葉にするのがはばかられるほど哀愁が漂う名シーンである。かくの如く昼と夜は交わらないのであった。
コンタクト [Blu-ray]
1997年、ロバート・ゼメキス監督作品。カール・セーガン原作。
SFの中で一番心に残っている作品。過去に劇場、DVDで鑑賞したが、
やはりBlue-ray版はオープニングの太陽系の描写、作品中に登場する宇宙の描写が非常に美しい。これらの映像だけでも観る価値がある。10年以上前の作品だが、それを感じさせない最近のデジタル化技術にも関心する。
導入部分の地球から太陽系外へと離れてゆく絵のシーンで、過去に人類が電波で発した音声を追い越していく演出は秀逸。
SETI(地球外知的生命体)探索に従事する天文学者エリーの人間的な成長の物語。
幼い頃に両親とも亡くした彼女の、科学者になるまでの道のりは作中ではあまり触れられていないが、非常に辛い道のりだっただろう。故に、彼女には幸福な家庭ではなく孤独の中で成長を強いられた喪失感のようなものがあり、それがSETI活動に向かわせた動機なのだろうか。
無神論者で実証主義を前提とする(彼女が独りで生計を立てるにはその能力が必要だった)あまり、「オッカムの剃刀」で議論相手を正面からねじ伏せてしまう。
融資のお願いにいった先の企業で自分の研究が理解されず感情的になってしまう。
相手を理解しようとしない、自分が理解されないのを相手のせいにする、エリーはまさに子供だった。
しかし、神学者との出会い、ベガから送られてきた謎の装置への搭乗で、彼女の人生観は大きく変わる。
証拠はないが、素晴らしい奇跡のような体験は嘘でも、妄想でもない。「オッカムの剃刀」が自分に向けられたとき、彼女は何万光年も離れた異星人を通して、周囲の人間との「CONTACT」を学んだのではないだろうか。
他のロバート・ゼメキス監督の作品はあまり好きなものはないのだが、この映画は異色の出来栄えで、他の作品と毛色がかなり異なっている。
これまで映画監督といえば、原作をどのように解釈して映像化するのかで価値が決まるものと思っていた。しかしゼメキスは、自己の存在を主張せず、原作に対して真摯に映像化することができる監督なのではないだろうか。
ホテル・ニューハンプシャー【字幕版】 [VHS]
~人は夢を追い求め、求めるものがつかめなくても生き続けていく。レイプ、近親相姦、ホモセクシャルなど、重くて複雑な人間関係てんこもりの映画です。どんな状況にあっても、生き続けて行かなければならないし、その中で、いくつかの夢はかない、いくつかの夢は破れるだろうけれども、夜明けはきっとくるという感じの映画です。タイトルに使ったのは映画の中~~に出てくる台詞の一つですが、まさに「人生はおとぎ話よ」という感じがする映画です。人生を真摯に考えたいときに見るといい映画だと思います。~