砂の器 デジタルリマスター版 [DVD]
日本映画が衰退したと言う人が多い。
「アニメ」「ホラー」「テレビドラマの映画版」「動物」と、
残念ながら、サブ・カルチャー的要素の強い分野に特化し、
本道・本質のドラマの優秀作品が出てきていない。
そんな中で、この40年以上も前の作品が、ここまでリアルに、
そして美しく、切なく感じられるのは、その作品の持つ力強さと
秀逸さがあったからこそ。
丹波哲朗の深みある演技、森田健作の青春ドラマで見せるおどけた演技とは別の、
真剣さ、加藤嘉の最後の泣き声・・・。いつまでも残る、名作中の名作である。
下世話の作法
人間社会の最近の風潮をたけしらしい辛辣な口ぶりで切っていく。基本は「粋」「上品」「鯔背」「伊達」と、反対の「無粋」「下品」「野暮」。前者がどんどん減っており嘆かわしいというもの。キーワードの品、夢、粋、作法、芸の5章についてたけし節連発で、なかなかいいことが書かれており、肯くことは多い。スポーツでの「礼に始まり礼に終わる」は柔道・剣道だけではないはず。スポーツ中継でまずこれが出来ていない人間が多い。相撲、ボクシング、確かに・・。食べ物屋でもスーパーでも文化度の低い精神的田舎者が増えてしまった。安易に何でも「夢」にしてしまう。「努力目標」と言い換えるべし。いい年のとり方。礼儀知らずや挨拶できない若者は方法としての作法を知らない、教わっていないから。恥の文化が消えてしまった・・・等々。これ以外にも様々なことがたけし節で続いていく。たけしの考え方のベースは、「たけしくん、ハイ!」や「菊次郎の夏」でお馴染の足立区島根町だ。足立区は東京の北はずれ、川向こうだ。区立梅島第一小学校、区立第四中学校。その時代の隣近所、商店街がルーツだ。それに浅草のストリップ劇場時代の芸人生活がたけしを支えているのだろう。本書はそう意味で「今」と「昔」の生き方の差を教えられることが多い。
私としては「恥」の面で周囲に感ずることは多い。まず電車の乗り降りを知らない老若男女が如何に多くなったか。電車から降りる人を待てない。ドアの内も外も開けて立てない。脇から入り整列乗車の出来ない男。通勤時始発電車のさもしい椅子取り合戦。電車で飲み食いの高校生。電車で化粧する女。未だに臭いポマードべったりの老人男性。子供を叱れない母親。犬同然にその都度はっきり面前で叱らねば躾がわからない老若男女。特に電車内(人前の)化粧は欧米では昔から「三流の娼婦」と言われてきたことを是非教えてあげたいものだ。
必殺からくり人 / 必殺からくり人 血風編 ― オリジナル・サウンドトラック全集 8
本作の音楽は、過去やこれ以降の必殺音楽の中でもかなり異質なアプローチを試みています。
デキシーや演歌調に混じって、特に際立った印象を残すのが、当時流行だったディスコ調を取り入れたBGM。
からくり人のモチーフテーマとして制作されたオープニング曲「許せぬ悪にとどめ刺す」が顕著で、
作品世界を象徴するテーマとして江戸風俗、サスペンス、謎解き、殺陣等あらゆるシークエンスにハマってしまう
魔法の様な一曲です。
この曲の持つ雄大な雰囲気が、シリーズ中最も客観性が強いからくり人の俯瞰的な世界観をより後押ししていた様に
思います。
実はこの曲、バリー・ホワイトの「ラプソディー・イン・ホワイト」と言う、あのウィークエンダーのOPにも
使われたソウル・ディスコの名曲をパク・・もとい下敷きにしています。
ある意味風刺講談的な印象のある同番組(そう言えば本来の必殺の時間帯なら裏番組ですね)のモチーフを
中村敦夫や和田アキ子登用と同じ様な意味合いで、逆手にとったのかどうかは今となっては不明ですが
使用の方向性としては同じでも、さらに微妙なサスペンスタッチなフレイヴァーを加えた事が、この曲を
極上のソウルに仕上げています。
このソウル・ディスコの方向性は、後の新仕置人でより統合、炸裂するのですが、黎明期(と言っても半年前ですが)
に横殴りの様にこの音をかぶせてきた度胸とセンス、そしてそれを受容するのからくり人の世界観は、
日本のドラマ史上に於いて一つの頂点だった様にも思えます。
(恐らく作曲は平尾氏ではなく、竜崎氏だと憶測しているのですが・・)
90年代に、70〜80初期の埋もれたソウル系の名曲を新たな解釈のコンピレーションで再発して行く、
という動きが世界規模で流行ったのですが、さしものレコードコレクター・バイヤー達も、
このからくり人の素晴らしさは見落としていた様です。(まあフツー時代劇のサントラは聴かんだろーなー)
必殺ファンとしては、世界に出しても恥じない一級のBGMを、ひっそりと染み込ませてもらっていた事に
例え様もなく感謝するものです。
魚影の群れ [DVD]
緒方拳、夏目雅子、佐藤浩一という演技力ある俳優達がぶつかり合い、映画の本質を見せられるような素晴らしい作品です。
各々が演技を超え人物になりきっている様は見るものを圧倒させる力があり、心が騒ぐというか映像の中に自分が飲み込まれていくような気持ちになりました。とても満足できる逸品です。
三島由紀夫と一九七〇年
自分は、この本の著者の一人 鈴木邦男氏(森田必勝さんと親友だった)と同郷で福島県郡山市在住の者ですが映画ミシマは今から26年前に市ヶ谷駐屯地に見立てた郡山市合同庁舎バルコニーで緒形拳さん演ずる三島由紀夫の気迫の演説シーンの撮影を高校生の時に見学しポール・シュレイダー監督からサインも貰った思い出の作品です。DVDはワーナー版クライテリオン版共に所有してますがBookに付録として着いてるDVDはアメリカ劇場公開ワーナー版を元にしているもので海賊版としては画質も良好 何といっても日本のプレイヤーで再生出来るのが魅力です。本体のBookの内容も三島先生が別名で執筆した作品を巻末に収録されてますし川端康成の「山の音」が三島先生の代筆だったという驚愕の証言も書いてあり読み応え充分です。ポール監督によると映画MISIMAは日本における所有権は東宝にあるのですが著作権放棄してる為に我が国ではパブリックドメイン化していると見なされても仕方ないと思います。 今や世界のカルト映画と成長した雅みやび溢れる傑作MISHIMAを、このゲリラ発売の機会に是非とも手に入れて下さい。