ばちかぶり姫 (ヤングジャンプコミックス)
玄田行の名前改めた山本夜羽の短編集。
マンガは娯楽のためにある、と考えるとこのマンガを読む気はうせる。読むと、心の深い部分が抉られる気がする。行き過ぎた自意識が、精神のバランスを失って、世界にどこにも居場所が無くなって、崩壊しそうな不安感が際限なく示される。
大抵の物語は、世界が見捨てて居場所がない「こんな私」でも生きてていいんだ、というナルシシズムに回収されるのが現代日本のイマジネーションの基本。けど、ナルシシズムは、現実とぶつかって壊れる運命にある。その壊れた自分を抱えながら生きていく様が描かれていく。
高校時代の幻想の彼女を思い続け、現実の彼女に出会ってもその幻想から逃れられない『クレイジーフォーユー』枯れてしまった才能に絶望しながら才能ある女性に狂ったように嫉妬する『言葉は海、そして水の泡』
僕は、好きな作品です。書評に宮台真司さんが「この世には、不自由な人間だけが知る自由がある」というフレーズがお気に入りで、購入しました。