大前研一 敗戦記
大前氏の東京都知事立候補、そして落選した経緯を自らの文書で綴った本です。東京の有権者に伝わらなかった、大前氏の政策、考え方などを本書によって伝えようとされています。
皮肉っぽく言えば、負け犬の遠吠えにも聞こえます。しかし、本来は「政策」を競い合って切磋琢磨して戦うべき「選挙」というものが、必ずしも(というかそういうものからかけ離れた部分で)そういうことろではジャッジされないという「現実」をも浮き彫りにしています。
応援演説に駆けつけてくれた加山雄三氏から受けた直言を包み隠さず自ら綴っておられますが、このあたりのことについて真剣に考えさせられます。
しかし、「選挙」によって選ばれた国政、地方の代表者がやっていることを冷静に考え直せば、やはり選挙というのは、青臭いといわれようとやはり「政策論争」であるべきであるのではないかと思うし、有権者もそういう意味でもっと賢くなるべきではないかと思ってきました。
ただ成功のためでなく (ソフトバンク文庫)
内容としては、外食産業の会社であったワタミが、農業、教育、医療・介護の領域に事業を拡大、外食産業もやっている会社へと変貌しつつある姿を、渡邉美樹社長が自ら記したものです。
「誰かがやらなければいけないことを、他人任せにせず、自分たちでやる。」
それら個別の事業への参画する意義については、興味深く読むことができました。
ここでは、個別事象でなく、各項目に共通の事象について、印象に残ったことを書きたいと思います。
それは、農業であれば耕作放棄地の有効活用、教育や医療であれば破たん寸前の学校法人・医療法人の買収により、以前の方針から運営をがらりと変えていくプロセス、およびその結果についてです。
すなわち、いずれの場合でも、
・以前にはなかった、「経営」という観点を現場に持ち込んだ。
・それにより、従来の体質でしか生きていけない人々が去って行った。
・新しい体制に共感し残った人員により、全く異なった「組織」が生まれた。
というものです。
これまでのやり方を変えるというのは、大変な労力が必要です。
もちろん、既得権益を守りたい人は、新たな体制に協力的な態度を取らないでしょう。
場合によっては、組織がぎくしゃくし、大量の退職者が生まれることもあります。
それでも、理念を共有できる人が残れば、組織は変えられます。
それまで、サービスを提供する側の理屈でしか考えられなかったところが、サービスを受ける側の視点に立って、物事を考えられるようになります。
夢を現実のものとしていく楽しさを実感することができます。
そういったことの素晴らしさを改めて教えてもらうことのできる、素晴らしい本だと思います。