アレクサンドロス大王東征記〈上〉―付インド誌 (岩波文庫)
現在のところ文庫版で読める最も充実した『アレクサンドロス東征記』と言えます。
ただし、近年の西洋古典関係翻訳書の傾向として母音の長短を省略する点は、いささか感心しません。「本書が書かれたのがローマ時代だから不必要だ」などというのは、まったくの詭弁でしかあり得ません。もしも、その論法が通用するのならば、本作に記されている「ヘパイスティオン」とか「カッリステネス」etc.といった人名表記も、ローマ帝政期の発音に則して書き改めなくてはならない、ということになってしまいましょう。前四世紀の出来事をアッティケー方言で再現している原著者への敬意を表する為にも、可能な限り古典期の発音で書き表して頂きたいものです。
往年の高津・呉両氏が活躍されていた頃が懐かしく感じられます。
テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX III (霧の中の風景/蜂の旅人/アレクサンダー大王)
ヘーゲルの著作全集やバッハの教会カンタータ全集みたいなもので、売れる売れない関係無しに出版されるべきものでしょうね。
とはいえ、その登場を長年待ち望んでいたファンにとって、全集という最も理想的な形でのリリースが実現したことはまさしく快挙。
ありがたいことです。
アレキサンダー プレミアム・エディション [DVD]
酷評されたという理由はわかります。
一度観ただけでこの映画のもつ凄さに気づくことは難しいと思います。
一回目に観たときは、偉大な王の伝記ものを期待しただけに、物足りなく思いました。
二回目に観たときに、人間アレキサンダーを描こうとしたのだと思いました。
三回目に観たときに、これは伝記というよりミステリーであり、悲劇なのだと気づきました。
愕然としました。カメラに映る場面、カット、小道具、人物の衣装に表現される心理、視線、
画面の隅で行われる事件、誰と誰が一緒に居たか(暗示的です)、紋章、大鷲、あの壁画、
すべて計算されています。無意味な画面が全くないのです。
全編を通して語られるのは、なぜアレキサンダーは死ななくてはならなかったのか、
ということのように思います。
ミステリーであるが故に、王の偉大さは本編が終わった後にしか画面に表現されていません。
またミステリーであるが故に、所謂、「感動」が薄いのです。謎解きですから。
伝記的なミステリーであり、ギリシア悲劇のような悲劇だと感じました。
最後にプトレマイオスが独白することはあくまで表面のことです。
監督が隠した真の意味は(これも実は述べられていますが)冒頭のほうにある洞窟、
あの場面がすべてのように思います。彼はすべてになりました。当然栄光の果てには
悲劇が待っています。鍵となる「彼はプロメテウスだった」、この一言の意味を
流してしまうとたぶん退屈な三時間になってしまうかもしれません。
観るもののレベルを試してきます。観る人間によって見える画が全く違うのです。
それでいて(誤解されるのを承知で)説明を一切していないのですから。
おそらくへファイスティオンの指輪の真の意味が解る(もちろんただの愛情表現の道具では
ありません)人がこの映画を正当に評価しえるのだと思います。初見で解る方、凄いです。
本当にもの凄い映画ですよ。
ヒストリエ(6) (アフタヌーンKC)
例えゆっくりだったとしても仕方の無いクオリティの高さ!!やっと序章を抜けていよいよアレキサンダー登場、しかもへファイスティオンの解釈がまたびっくり(まだ不明な点も多いですが・・・)で、様々な伏線も張りまくりな感じであって、なおかつとても面白く読ませます!
一気に登場人物が増えますが、その顔、キャラクターも、見せ方も上手くて混乱はありませんし、ぺウケスタスまで出てきます!ミエザの雰囲気がまたいいんです。
「ヘウレーカ」の時のハンニバルの目も特徴あって良かったんですが、今回のアレキサンダーの目も凄くなるほど!と思わせますし、既に人柄と後の特徴の絡みを想像させます。
そして鐙の話しもいいです。
ネットでも調べちゃいますが、ここはいろいろ関連本を手にとってしまいそうです、次までにまた知りたくなりますし、知っておいてもその上を軽く越えていく面白さが、さすがです。
ウィキぺディアの「カルディアのエウメネス」関連の充実度、5巻の時には全くなかったのに(笑)、この漫画の影響力の凄さの一端ですよね。