いねむり先生
伊集院静氏36才。2年前に妻で女優の夏目雅子を失い、人生の蹉跌にも置かれていた同氏へ「ぜひ一度、逢わせたき人がいます」との先輩Kの計らいから『いねむり先生』との約2年間のストーリーが編まれる事になる。これはその半ドキュメント作品だ(フィクション部分もある)
伊集院静氏は現在仙台在住で、この度の震災でも著者自ら被災し、それに関してのメッセージもメディアへ寄せてはいるが、敢えてこの作品と無理に関連付ける必要はなかろう。
色川武夫氏が夭逝したのは平成元年であったのが、私個人はこれを象徴的に感じている。昭和は混沌こそが日本にパワーを与えていた時代であって、正邪や白黒をつけず、また問わず(それを問う余裕もなかった)それぞれの人間が、まだあるがままを生きてゆけた時代だ。このせんせいはまさに、ピカレスクを背負いながらも、混沌とし退廃的な世界を平気で行き来できる無垢な天童であった。
この作品ではそんなせんせい=彼の奔放な魅力を伊集院静=サブローの視点から存分に押さえてゆく。そこにはせんせいを、あるがままに愛し、受け容れる人々が溢れ、ある時は礼に欠き、またあるものは独占しようと、決して良い人々ばかりではないが、周囲の心配をよそにせんせいは、それをたやすく受け止めてゆく。
せんせいが好む世界は博奕(競馬、競輪、麻雀、花札)演芸、角力、ジャズ、グルメと多彩で、その当時、周囲に都度勧められはするが、小説家になる事など、自己の才がないとはねつけていたサブローにとって、視るもの聴くもの出会うものが彼の内面にかすかな変化を与えてゆく。
前述の通り、この二人の出会いはK氏に拠るのであるが、これ以上なきほど見事な出逢いとあると思う。喜びを感じる部分が近いので、二人は同じところで同じ事で愉しむことが出来たのだから。結局主人公のサブローはそれが故に、救われてゆく。せんせい以外ではそれはかなわなかったはずだ。
せんせい、と言っても何かを教えようとした訳ではないし、実際文中でも具体的に何かを教わった記述はない。ただ「感じるまま」が描かれ、「敬愛」のうちの「愛」が勝る様子が読み手に伝わってくる。
平成の時代になり、現在では日本経済が落ち込むや国民は他者へヒステリックになる一方で、善悪をとかくつけたがり、喫煙さえ悪、ギャンブルなどとんでもない風潮ーー人間の潤滑油さえ奪われかねないーー心はササクレ立つばかり。まるで社会主義国のようになってしまった。こんな時代にはこのせんせいは存在することが出来なかっただろう。読者はきっとこの作品から、今の時代に欠けたもの、失ってはならない大切なモノを見出すかもしれない。
しかし今の時代、国民一人一人こそがサブローを苦しめる『不吉な幌馬車の幻覚』を見ているかもしれないのだ。
私は『麻雀放浪記』の坊や哲と=その引用元と思わせる、色川武大が愛した芸人の坊屋三郎をかけ、主人公名をサブローにしたのだろうかーー作者はそんな心の交流を『亡き師』に対して密かに試みようとしているのか?ーーなどと私は勝手な想像をしたりしている(オモイスゴシカモシレマセン)
1985年に私は、知己の漫才師に連れられ今は無き四ッ谷のバー『ホワイト』で色川武大本人に会った事がある。このバーでは内田裕也、高橋判明などあくの強い業界人が夜な夜な集い、常に派手なケンカや何かと話題の尽きない、やはりその頃にしか存在し得ないような有名なバーであったが、この作品を読み、その時期は引っ越しの多かった色川武大が店の付近の、新宿大京町ー左門町在住の時期であったのだとわかった。そのときもあの大きな目をギョロつかせながらカウンターで彼は笑顔ではにかんでいた。
この作品では敢えて触れていないが、色川武大の死を機に、同年(1989年)から『小説家伊集院静』の歩みを決心した事実は無粋ながら記させて戴く。
こころの病気を知る事典 新版
子どものことで気になることがあって買いました。
普通の心の病気だけでなく、子どもの心の病気もまとまっていて、
いいと思いました。文章も分かりやすいです。
だいたいの病気は載っていて、これで2000円は安いと思いました。
持っておけば、気になったときにすぐに調べられていいと思います。
不眠症・睡眠障害 みるみるよくなる100のコツ
睡眠の不調に悩まされることは体の変調や異常を示している可能性もあり、体が発するシグナルと受け止め生活改善をすべきなのだ、ということを読了後に思いました。
多くのトピックを読み易くそして短めに網羅しているので、睡眠というものについて詳しく解りたい人には多少もの足りない感じのする内容かもしれません。しかしタイトルが「100のコツ」であるように、手っ取り早く実践できる対処法や改善策が非常に沢山まとめあげられています。どならにも得られるところのある内容に仕上がっている本書だと思います。
若い人は自らネットを駆使して自分から情報を取りに行くでしょうけれども、年齢が高めの世代は常にそうであるとは限らないと思います。そうして意味でも巻末に列挙されている全国の睡眠関連の治療を行う医療機関の一覧表は良い心遣いだと思いますし、多くの著名な先生方/専門家によって書かれていることからどちらかというと年齢が高めの人にフォーカスしてまとめあげられた本書だと思いました。