チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記
日記をそのまま翻訳しているような感じで、内容は、本当に日記ぽい内容のため、つまらない部分も多い。ただの金持ちのぼんぼんのきままな旅行の日記であるから、紀行文としての価値は低い。
しかし、最初は無自覚に無軌道に旅しているだけだった若者が、だんだんと庶民の生活に対して考えを深めていき、そしてこの旅で培われたものが彼を革命家へと導いた、という事実を前提として読むと、なるほどなるほど、と読まされてしまう。
前半と後半とでは、明らかに著者が考えていることに変化が生まれている。人間は短期間で変わるものなのだ。この旅は、間違いなく彼の人生を左右し、またそれが南米大陸の運命を左右したのだ。
南米を旅すると同時に、一人の人間が若いボンボンの医師から革命家に至る過程を旅する、人生の旅を描いた良書だ。「旅に行きたい」という気持ちを大きくする、という意味では、これほど優れた紀行文もないだろう。
モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫)
ゲバラよる旅日記。今度公開される映画の原作。いわゆる自分探しの旅。まだ「チェ」と呼ばれる前。行き当たりばったりで始めた旅でその熱く純粋な魂に、感じたままに生きろと深く刻まれて行く。その変化する様子が清清しいくらいに鮮烈だ。おんぼろバイクに乗って、文字通り、身の心も大きく揺すぶられるゲバラ。後世に伝わる革命家としてのゲバラしか知らない自分にとって、彼がこんなにも感受性豊かでユーモアのある人物だったとは嬉しい驚きだった。
モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版 [DVD]
久々に、本当に良い映画を観たと思います。
歴史的な背景を抜きに、何の知識も持たずに観ても十分に楽しめる作品でしょう。
2人の旅の厳しさ、その一方で垣間見ることのできる若くて奔放な一面。エルネストと友人とのやり取りもまたユーモアに溢れ、話の節々で思わず微笑ましい気持ちになります。
また南米を旅する中で映し出される風景もそれぞれ美しく、無駄なBGMなどがほとんどないシンプルな作りにも好感が持てます。また、スペイン語の独特のリズムと、旅のリズムが、ちょうど歴史の重厚さと絶妙なバランスを保っているように思います。
もちろん、チェ・ゲバラという革命家についてある程度基礎知識をつけて観ればより楽しめるはず。いずれにしても、清々しい気持ちになれる秀逸の作品と言えるでしょう。
モーターサイクル・ダイアリーズ コレクターズ・エディション [DVD]
私はいわゆる全共闘世代、といってもどこのセクトに属していたわけでもない。60年代なかば、ゲバラは英雄だった。キューバ革命に関する彼の著作を読み、感動した。さらに、突然、大臣の職を辞し、次なる革命を求めボリビアに赴き、67年惨殺された。その時の彼の写真がいまも強烈なイメージで残っている。この映画はそのゲバラの青春時代を描いた映画だが、医師志望の彼が友人と南米大陸を走破する旅に出掛ける。厳しい旅のなかで、庶民の厳しい現実を目の辺りにして、彼の若者らしい「正義感」がとめどもなく湧き出でる。カトリック系キリスト教の修道女が中心に運営しているペルーのハンセン氏病の療養施設で3週間のボランティアに従事、そこで、かれはあっという間に、患者のみならず修道女たちの心を掴む。滞在中、23歳の誕生日を迎え、パーティを開いてもらう。挨拶を求められ、彼は「南米の国境に意味はない。我々は一つの南米大陸人なのだ」という素晴らしいメッセージを発する。若者らしい正義感とこの考え方こそ、後年、彼をして奇跡の革命家たらしめた。そんな気がする。「正義感」や「社会性」など人と会話するテーマになりにくいいま、この映画は爽やかなメッセージを我々に与えてくれる。