14歳からの商い
郁文館夢学園の中学生たちが、学校の理事長でもあり、ワタミ代表取締役でもある渡辺美樹さんに、「仕事」「働くこと」について様々な質問をする。社会人にもなると、なかなか聞きにくい質問をズバズバする。読んでいて大変参考になりました。
現在、中学・高校で経営のことを学ぶような授業がありますが、その際のよいテキストになるのではないか。
教育崩壊―「夢教育」で私が再生に挑む
ワタミの社長でもある著者の2003年からの3年間、理事長として中高一貫教育の私学経営に乗り出した記録である。
プログラムの基礎に学力の知育・社会性の徳育と、自己を深く知り自分のやるべき事に気付く力の育成の3本を据え、夢・目標に向かって努力し続ける力を養う教育に、著者の幅広い人脈を活かした職業ワークショップや合宿・1年間の留学プログラムから、東大やスポーツ競技までの目標に分かれたクラス編成の設定を行い、個々の生徒を“お客様”として捉えた学校経営を行なっている。 他にもISO14001の認定取得を環境教育に活かしたり、生徒会を生徒指導教師主導で行なわず、生徒自身の手でルール作りからペナルティの提案に至るまで自主的に行なわせたりと、既存の“在籍中は問題を起こさず、進学率さえ上げればよい”といった価値観とは異なる運営も好感が持てる。
その一方で、教師を契約制にしたりといった、労働者には厳しい面も見受けられる。
不満な点は、教師評価をどのように行なっているか(店舗のように売上で簡単に量れるものではない)、生徒の車・バイク免許取得への対応などが書かれていないのと、この本に限らず居食屋・介護事業も合わせて自著で紹介されるばかりで、第3者の眼で取材し、書かれている本がない点だ。 プロフィールに常にある『青年社長』での高杉良は、褒めすぎのきらいもあるのではないかと思うので、是非溝口敦や魚住昭のような厳しい眼から書かれた本も読みたいものだ。
自分のことを理事長“先生”と大仰に書いている点も気になったが、政府の審議委員会の委員職をいつまでも蹴る気概は持ち続けて欲しいと思う。 仮に勲章のようなもんを恥ずかしげもなく受章した際には、著者の掲げる『お客様第1主義』がメッキであった事の証明となり、何を書こうが読む価値は地に落ちるであろう。
ただ成功のためでなく (ソフトバンク文庫)
日本経済界の次代のリーダーといえば、一般的にはソフトバンクの孫さんやユニクロの柳井さんあたりを思い浮かべる人が多いのだろうか。しかしながら、どのような事業を行っているかという観点から考えると、僕には渡邉美樹さんこそが今もっとも注目すべき人だと思える。
なぜなら、彼は始まりこそ外食産業だが、現在は福祉・農業・教育・病院・介護等の利益を出すことが困難である一方で国や地方公共団体に任せきりにも出来ないと思われる、人が人らしく生きるために重要なテリトリー(いわばソーシャルビジネスに近い部分)においてその業績を着実に拡大し続けているからである。
日本各地において多くの人と関わり、活動の輪を広げ、少しでも多くの人から「ありがとう」の言葉をもらうことを生涯の目標としている彼。その信念はこの決して厚いとは言えない文庫本一冊からでも、充分に読み取ることが出来る。
今後が大いに注目される人物である。