バートン・フィンク(字幕スーパー版) [VHS]
シナリオ作家が迷宮に迷い込む物語なんて誰も読まない。
それはフェイクだよね
この作品に作られた世界は騙し絵
そして自慰
しかしホテル舞台のホラー映画として見れば面白いです。
いや、一番でしょう。
あのホテルには行きたくない。
バートン・フィンク [DVD]
この映画のあらすじを聞かれても、答えようもない。難解というよりも徹底して観客の感覚に訴えるということであろう。
洗面所の配水管を伝う男女の営みの声の反響、ゆっくり剥れる壁紙の不安定感、誰もがいらつく蚊の音、仕事をせかすように耳に響くプロデュサーの秘書のタイプライターの音といった五感を過剰に刺激する演出は、見ている間は夢中で引き込まれてしまう魅力は持っている。そして箱の中身や女の死体の処理、フィンクの両親の安否など、解決しない事柄も多く、この事がフィンクのみならず観客をも不安に掻き立て、この中盤までの緊張感のある、そしてシュールな演出は見事だった。しかし、後半にジョン・グッドマンがありえないほどの炎の中に登場すると、現実感がゼロになってしまい、個人的にはここから何かしらけてしまって、拍子抜けしてしまった。このシーンのせいで、最後の海辺のファンタジックでロマンティックな終わり方も生きてこなくなり、傑作までもう一歩であった。
ジョン・タトゥーロはモジャモジャ頭で名演。この人は派手さがないが、役柄ごとに演技や容姿を変化させて、同じカメレオン俳優のロバート・デ・ニーロを上回る実力を持っていると思う。スティーブ・ブシェミはチョイ役ながらいつものように場面をさらってしまう怪演。
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暑さ、物音、壁紙がはがれる、蚊、じめじめした蒸し暑さ、その中で書けない脚本を考える。
この胸騒ぎする不安感の描き方は、初めて見る最高のサスペンスだ。
ジョン・タトゥーロ、ジョン・グッドマンの快演は画面に釘付けになってしまう。
唯一ホテルのオアシスでもあった、ラストの海辺の美女には結構ビックリさせられる。