気まぐれ天使 DVD-BOX I
「気まぐれ天使」は、数ある「石立鉄男ドラマシリーズ」作品の中でもとても不思議な雰囲気を醸し出しています。都会の厳しい現実の中で、童話作家を夢見る主人公「加茂忍」。彼を見守る周囲の人たちは皆暖かく、時には厳しく、時には優しく、彼を応援しているのである。その励まし方も人それぞれで、彼を「夢の世界」へ留まらせようとする婆さまやなぎさ、彼をあきらめ自分の夢をつかもうとする妙子、現実の世の中で彼をきちんとさせたい榎一やともえ御前等など…見所は一杯である。リアルタイムで観た子供の頃は「ただ楽しいドラマ」という印象だったのだが、歳を重ね、再放送を観る度に、その奥深さに唸るような気持ちです。このドラマは、夢見る、心優しき人たちにぜひ観て頂きたい。時間を忘れ…何度も繰り返して観てしまう事でしょう。
最後に、このドラマの主題歌を唄っているのは、現在日本のゴスペル・シンガーの第一人者「小坂忠」氏で、同名サウンド・トラック盤でも見事な名唱を聴かせてくれます。こちらもやはり、必聴です!!
ゴールデン・ベスト
歌:柴田恭兵、作詞:田中康夫、作曲:近田春夫。いまとなっては100パー考えられない組み合わせである。三者三様の汚点、消し去りたい過去かもしれない。
小説同様、歌詞に註釈が付いてる。レイニー・デイ、グルーミー、ハップハート、メディタレイニアン・バー、ファラ・ガール、アフェアー、アーバン・デイ、ステディ...もういいってか?小説でさえ過剰に思えた康夫ちゃんの世界観が2'46"に余すところなく投入されていて、大爆笑である。
小説が1981年1月、このイメージソングが4月、映画が5月だから、田中康夫はあっという間に時代の寵児になった訳だ。売れ始めたばかりの新人作家で、イメージソングを作るってだけで有頂天だっただろう。あと半年経ってたら、田中康夫が柴田恭兵の宝焼酎「純」のコマソンにGO出し、しているはずがない。
柴田恭兵は1979年のTBSドラマ「赤い嵐」で思いっきりメジャーになるとともに、思いっきりダサイ存在にもなっていた。“何やってんだい、しのぶちゃん”とミュージカルノリで能勢慶子に絡むアレである。柴田恭兵は、それはそれで味もありファンもついてた訳だが、「なんクリ」は柴田恭兵のイメージとオーバーラップする部分はほとんどなく、ファンにとっても???だったのではないか。
近田春夫はこの年、ぼんちで当てていた。とにかく何でもこなしておこう、という時期だったのではないか。全体としては当時の近田テイストの曲だし、後年CMで才能を発揮しているように、サビは非常に耳に残るものになっている。でも当然詞先だろうこの詞と、柴田恭兵のキャラ、歌手としての個性...手に負えるシロモノではない。
まあ20年後の柴田恭兵は予想ができたとしても、近田春夫がテクノ・トランスの人になってたり、ましてや康夫ちゃんが長野県知事になってるなんて本人すら予測もつかなかったはずだ。思えば遠くへ来たもんである。