巨人ゴーレム 新訳版 [DVD]
言わずもがなのドイツ表現主義映画の傑作。
同じ監督による「ゴーレム」は実は三部作なのだが、第二次大戦の戦火で焼失し、現在残っているのはこれ一作だそうだ。
最初の作品のタイトルはそのものずばりの「ゴーレム」で、これは資料によると、1914年の制作らしい。
続く第二作目のタイトルが「ゴーレムとダンサー」でこちらは3年後の1917年の制作となっている。
三部作の最後を飾る本作「巨人ゴーレム」は1920年の作品ということだから、同じ監督によって3度、しかも3年おきに制作されたことになる。よほどゴーレム好きの監督なのだろうか?
いずれも映画草創期のサイレントだが、表現は圧倒的で特に後半のクライマックスの迫力には驚かされる。トーキーになってから後に、ジュリアン・デュビビエによってリメイクもされている。
映画ファン必見の一本です。
野ばら [DVD]
幼少の頃にTV放映で観た時以来、「野ばら」は私にとって大切な作品の一つになっています。「サウンドオブミュージック」と並ぶ素晴らしい音楽映画であり、多大な感動を届けてくれる古典的名画であると思います。天使の歌声と称されるウィーン少年合唱団の歌声も素晴らしいですが、何より主人公の少年を取り巻く人間ドラマに心打たれます。現代では失われつつある人情や心の絆といったものが、美しい風景や音楽と共に一篇のポエムのように描かれていきます。そして劇中に流れる「アヴェ・マリア」の旋律・・・。心洗われる必見の名画です。
ボッサ・カリオカ
はじめて買ったボサノヴァのCDがこれでした。これを聞くと、窓をあけてドライブした夏の夕方とか、パスタを茹でて食べた日曜日のこととか、いろんな事を思い出します。そんなのんびりした幸せなひとときのバックに流れているような、しあわせであたたかな音楽です。ホントウにこれはおすすめですよ。
ユリイカ2011年4月号 特集=パウル・クレー 造形思考のコンステレーション
京都と東京で開催されるパウル'クレー展に因んで特集された1冊。クレーにはカタログ'レゾネが出ている画家であり、全作品を確認するには比較的容易い。故に研究水準はかなり高い。それを反映してか、収録されている論文も多様な観点から構成され、有意義な内容である。クレーと印象派の関係を三浦篤が論じて、過不足ない。また展示カタログ並の作品解説がゲーテの色彩論の邦訳で活躍した前田富士男ほか専門家が巧みに執筆。中でも岡崎乾二郎と松浦寿夫が対談しているが、作家としての岡崎の指摘は鋭利にして秀逸。ここを読むだけでも価値ある。久しぶりにクレーを再読するには重要な特集が作品の来日とともに出された。出版社としての絶好の企画力を評価したい。
クレ-の絵本 (講談社ARTピース)
クレーの絵は、明るい色調で描かれていても、その中にどれも暗い悲しみと静けさを湛えています。谷川氏の詩とリフレインして、クレーの絵が暗い背景から浮かび上がってくるように頭から離れません。クレーの絵の中の言葉にならない想いをすくい取って、谷川氏の平仮名ばかりで書かれた詩が響いていきます。
「階段の上の子供」、明るい家の外に置き忘れられた人形のような子供の絵に添えられた、互いに伝えられない想い。見えているのに手が届かない何か、自分の身近にもある気がします。
「選ばれた場所」は、この中で一番好きな詩です。「ことば」「たましい」「ゆめ」というありきたりな言葉が、なぜか心に静かに残ります。つまづいた道の先にあるもの、暗くて深い「あなのようなもの」が見えるかもしれないと思えます。
「黄金の魚」、表紙になっている一見きらびやかな黄金の魚の絵ですが、周りの魚は皆黄金の魚に背を向けて泳ぎ去っていき、深遠の蒼の海に泳ぐ姿は、ひどく孤独に感じます。谷川氏の詩にある涙が海の泡に溶けて見えるような気がします。
疲れた時や、寝る前につい手にとってしまう一冊です。