満月の夜はあなたと (フローラブックス)
恋するヴァンパイアシリーズの4作目で、上の兄3人はヴァンパイア、下の妹がウェアウルフという設定です。今作はシリーズ中でずっと昔に死んだと思われていた妹が主役のパラノーマルロマンスです。2番目の兄夫婦が経営するカラオケバーに立ち寄った際に、思いもかけず自分の意思とは無関係に、理性も道徳もそっちのけで有無を言わさず引きつけられてしまう人間の男性との出会います。(実はその彼も同じ様に引きつけられていたのですが。。)その後彼女からの強引なアプローチで、その夜の内に性急に一夜の情事を結ぶのですが、その繋がりが更にお互いを一度限りの関係で無視できない存在だとしらしめる事になるのです。訳合って過去にウェアウルフに変異させられてしまい未だにそれを受け入れられず、人間に戻れるワクチン開発に励む彼女と、過去に運命の女性と信じてやまなかった彼女を自分のせいで死なせてしまったと思い込み、もう誰も愛する事はできないと心を閉ざして何年も生きてきた人間の男性。その男性が獣医という設定には、うまいな!と思わずにはいられませんでしたが、ヴァンパイアロマンス好きの私としては、ウェアウルフの女性視点の展開と相手がごく一般的な人間の男性だったと言うところでイマイチのめり込めませんでした。そもそもこの作品を読もうと思ったきっかけは、シリーズ1〜3作にハマり、締めくくりとなる今作を読まずにはいられなかったからです。シリーズを通して展開されてきた物語の進行や魅力的な兄達は健在で今作にも登場してきますので、ファンなら手にしてしまう作品でしょう。ヴァンパイア物はあまり好きではないけれど、シェイプシフター物のロマンスが好き!という方であれば、最初の3冊を読まずともあまり気にせず楽しめると思います。著者のキャシーラブは、読者を引きつけてやまない魅力的な人物を造り出すのに長けている作家だと思いますので、パラノーマルロマンスで何かないかな〜?と探している方は、彼女の作品は読んで損は無いと思います。今作が星3つという評価なのは、シリーズ3作が個人的にはとても楽しめたので、それらに比べるとハマリ度が低かった事が要因です。
“文学少女”見習いの、卒業。 (ファミ通文庫)
菜乃の物語、遂に完結!そこに何があったかといえば、純粋な想いがあり恋がありそして失恋があり−−。菜乃、やはりというか心葉の遠子先輩への想いの牙城を崩すには及ばず、でも心葉の心に残したものは確かにあって……。
「こころ」と「桜の園」をモチーフにした物語運びは相変わらず見事、書き手を錯覚をさせるいつもの叙述トリックも含めて。本編の感想としてはみんなして病み過ぎ勝手に思い込み過ぎ、一途過ぎとそんなことを思ったりしました。いや相手を好きなのは分かるんですけど、もっとこうその相手にもすぐ分かるように単純に愛したら楽なのになあ、と。まあ人間、そうそう思い通りに自分の気持ちを表現も、制御も出来ないのでしょうけども。
菜乃の最後辺りの心葉への述懐が今巻最大の見せ場、読んでいて胸が熱くなりましたです。終わり方がとても良く、最高の気分でこの外伝のシリーズを読み終えることが出来ました。次は挿話集4とのこと、こちらも楽しみに待ちたいと思います。