Very Best of Albert King
Rhino社得意の、レーベルを越えたブルースの巨人ベスト盤。このアルバート・キングの一枚も、巨人のキャリアを網羅した充実の内容だ。あの曲この曲がないじゃないか、というファンの声は出るだろうが、ヒット曲・重要曲はほぞ収録され、入門編としては最高の選曲ではないだろうか。
セントルイスはBobbin時代の1と2。アレンジもタマラナク格好いい前者、ヒットした後者はアルバートのキャリアを語るに外せない。そして黄金のStax時代のヒット曲がズラリ。カタルシスのライブ録音「Blues Power」あり。そして後期のヒット・ナンバー「Cadillac Assembly Line」などなど。アルバート王のブルース・パワー全開の名曲・名演がギッシリ詰まってます。
それでも凄い曲はまだまだ有るので、この一枚では全然カバーできません。ライブ盤も見逃すなかれ!
ワッツタックス / スタックス・コンサート [DVD]
実は衝動買いでした、安かったし。
もしも、これを(ライブ映像満載)とか思って買うのなら大ハズレですよ。僕も、そういう期待をしてたのですが・・・。
しかしながら、予想外に面白かった!
★★★★★にするか迷ったのですが、やはり5つ星にはライブ映像が足りないかナ~と。
最初に流して観て、それからチャックD(←ヒップホップグループ、パブリック・エネミーのメンバー)のコメンタリーで観直してみたら、より面白さが増しました。
これは70年代初頭の黒人風俗というか、アメリカ全体の中での黒人社会の状況が低い視点で(つまりリアルに)感じられます。この時期の、彼らの強いコミットメント、あるいは「自分たちで世の中を変えてゆこう」という意思の表れには、その30年後の日本にいる僕らにも共鳴する事でしょう。
たとえばですが「スラム街に10万ドルを寄付する」というやり方ではなく、同じ金額でイベントを主催するという事。
1ドルのチケットで興行を行って、その10万人分の収益は地元の病院や地域団体に還元される。運営スタッフから警備まで黒人を雇って連帯を高め、かつ労働意欲や雇用問題にアピールする・・・。
スタックス・レコード、黒人運動・・・。まったく関心がない事柄でもないのですけど、正直なところ専門的な知識はありませんから半端な物言いは差し控えます。
ただ、ファッションとしてのヒップホップ・カルチャーが盛んな日本の青少年(笑)には是非とも観てほしい気がしました。そのルーツにあるもの、そこから現在にフィードバックされる何かが感じられたら・・・。
Blues at Sunrise
1973年、スイスのモントルー・ジャズ・フェスティバルでのライブ録音全7曲。三管・オルガン&g,b,dsのバック(サイド・ギターは若きドナルド・キンゼイ)に、大王アルバートのブルースが北欧で爆発。名門スタックスで絶好調だったキングの貫禄だ。
結構な数のライブ・アルバムが出回っているキング・アルバートだが、本編冒頭2曲のライブ・バージョンは少ない。「Don't Burn~」はアレンジもソロもスタジオ版にかなり近いが、やはり聴衆を前にしての熱気が熱い。2曲目はレイ・チャールスの「I Believe To My Soul」。歌もギターもスタジオ・バージョンよりガゼン力が込もっている。
他にも得意の展開のスロー・ブルース2曲(どちらも10分強)や必殺キラー・チューン「I'll Play The Blues For You」など充実の快演が並ぶ。しかし、こういったヨーロッパでのフェスティバル出演を聴いてると、地元の黒人相手の演奏は一段と凄まじかったんだろうなぁと想像が膨らんでゆく。そんな映像が残ってないのだろうか。
ちなみにアルバート崇拝者の私が思う王のベスト・ライブCDは83年録音のやや海賊盤臭い「Rainin' in California」だ。彼のキャリアの中でも比較的後期の録音だが、ブルースの権化、鬼の気迫!問答無用のステージである。入手困難になる前にゲットすることをお薦めします。
ジャズ・レコード・ブック―キング・オリヴァーからアルバート・アイラーまで (1968年) (TOA Popular Library〈6〉)
初版から、すでに四十年以上の時を経ていますが、ジャズ評論家の良心、粟村政昭さんの名著はいまだに不滅の価値を有しています。それは、著者の審美眼のいかに優れているかに拠るものですが、同時にまた、粟村調とでも呼ぶより他にない文章の力が、その正しい評論にさらに美味な味付けをなしている点も大きな魅力です。その一例を記します。スイング時代の名トランペッター、ジョー・スミスの項に「(フレッチャー・ヘンダーソン楽団でソロを吹いた)「スタンピード」のソロを聴いて感動しない奴は、人間ではないと思う。」と書かれています。なんとも大胆な、まるで命を張ったようなこの一文を、私は13歳で初めて目にしたのですが、・・・「なんという褒め方だろう」と思うと同時に「是非とも自分の耳で聴いてみたい」と思いました。
当時。長らく廃盤であったその演奏はいまではCDで容易に聴くことが出来ます。私もはじめて入手するまでに相当の時間を有しました。そして10数年前、出張先のバークレーのレコード店でCDを求めましたが、聴いた瞬間、腰を抜かすほど感動すると共に「粟村さんの耳の良さと、その筆の魔力」に改めて畏怖畏敬の念を覚えました。粟村政昭著「ジャズ・レコードブック」とは、そういう本です。いまどきのレコード・ガイドとはまったく値打ちが違います。そして、ジャズを愛し、ジャズにある種の人生を捧げた人間にとって、いつまでも色褪せることのないバイブルであると思います。この本に出会わなければジョー・スミスのソロに出会うことはなかったでしょう。そんな出会いが、全ての項目に散りばめられているのです。あえてバイブルと申し上げる所以です。
悲愁 [DVD]
以前、WOWOWで鑑賞した事をスッカリ忘れて、今回DVD購入。
DVD Packageに記載されている粗筋を読んで、『あぁー、あの映画か』と気付いた次第。
しかし今作のような50年代に製作された典型的Melodramaは大好きなので、楽しませてもらいました。
ウィリアム・ホールデン & ジェニファー・ジョーンズ主演の「慕情」と何かと比較されるようだが、共通点は
1.演出がヘンリー・キング
2.配給会社が20世紀Fox
3.主人公の男性が最後に天国に召される
ぐらいでしょうか。
デボラ-・カー演ずるシーラ・グレアムの原作なので、内容的にはNon-Fictionに近いのだろうが
アル中だったF・スコット・フィッツジェラルドの描き方が事実に即していないような気がする。
試練を味わう度に大酒を食らい、酒乱になるのとアル中とは根本的に違う。
原作を読んだわけではないので、偉そうな事は言えないが、
映画の内容をDramaticにする為に脚色されているのではなかろうか。
それ以前にフィッツジェラルドには病弱な妻が、シーラには婚約者がいながら
不倫関係にどっぷりと浸っていく2人には余り共鳴できない。
映画会社をクビになったフィッツジェラルドは死ぬまでシーラに食べさせて貰っていた訳だが
妻や子供への仕送りはどうなっていたのだろうか。
まぁ野暮な事は考えずに「悲愁」を楽しむのが一番です。