ヴィヴァルディ:四季/ピアソラ:ブエノスアイレスの四季(デシャトニコフ編曲)他
ヴィヴァルディの『四季』の楽章の合間に、ピアゾラの作品を挟むという、所謂コンセプトアルバム。
これはこれで、面白い。ヴィヴァルディの後にピアゾラが来ても格別違和感はなく、
かえって新鮮に響く。音も、このオケの録音には珍しく弦の厚みがあって好ましい。
『四季』そのものは、わりと伝統的な解釈で奇をてらったようなところはない。
ダウスのソロも、常套的であるが、安心して聴ける。ピアゾラの哀愁、ラテンのリズムの弾み
の表出もなかなかである。『ブエノスアイレスの四季』そのもの中にヴィヴァルディの『四季』
が挿入されたジャクスタポジションなので、尚のことしっくりくるのかもしれない。
ただ、ヴィヴァルディの『四季』が、全体的にレガート過多の表現で、バロックとしてはややロマン的
過ぎるところがなきににしもあらずで、ここは多少好みが分かれるかもしれない。その分、遅い部分の
情感はなかなかである。ライヴ録音だが、音は非常に鮮明。
アストル・ピアソラ作品集
ピアソラのキンテートで活躍したシーグレルにクラシックのアックス。
この二人だけでどんなピアソラが聴けるのか?
素晴らしい編曲!ピアノでだからこそ出せるダイナミズム!
どの曲も秀逸です。シーグレル御馴染みのカデンツァ、たっぷりと聞かせてくれます。
終曲のタンガータは物凄い迫力でたたみかけます。
まさにピアソラをピアノで弾きたい人は間違いなく引き込まれるでしょう。
この楽譜を是非見つけたいものです。
ブエノスアイレス [DVD]
性懲りもなく、喧嘩別れを繰り返す、腐れ縁の二人。
純真でまっすぐ なトニー・レオンとジゴロのようなレスリーの歯痒い愛。
クリストファー・ドイル独特のカメラワークでスクリーンはカラーになったり白黒になったりを繰り返す。それをピアソラのタンゴが冷ややかに彩っている。この映画のなかで、チャンがタバコをもらい火するシーンが印象的だ。温かいオレンジの灯を通してチャンの蒼白い端正な顔が浮かび上がる。そして目を閉じると長い睫毛が影を落とす。彼のすべての仕草が媚びを売っているようで、観ているだけでドキドキしてしまう。
一方、トニー・レオンは一見すると大人の渋い男なのにふとした瞬間少年のような愛らしさを見せてくれる。保護欲が強い分、制服欲も強い。最後に出てくるイグアスの滝が彼の内面を表しているかの如く激しい。こんなに役になりきっているトニー・レオンだが、現地に着くまで自分がゲイ役である事を知らされていなかったという。
レスリー・チャンを亡くした事は香港映画界にとって大打撃だろう。
この映画のラストを観ているとチャンの最期はああだったのかと気が滅入ってしまう。
ブエノスアイレス 摂氏零度 [DVD]
独特な創作方法を垣間見られるのが嬉しい。幾通りものエンディング、物語、登場人物の中から、本編が選び抜かれたんだなと実感します。あまりにも本国から遠い撮影場所ゆえに、スタッフ・キャストともに、香港に帰りたいと願いながら、撮影が長引き苦労したといった内輪の話を聞けることで、大好きな作品に関わったかのように思えます。屈託なく笑うレスリーの笑顔がもう1度観られたことも、大きな価値がありました。
僕と未来とブエノスアイレス [DVD]
主人公のアリエルが、すっごくすっごくいい。
迷ったり傷ついたりするモラトリアムな若者を
うまく描いている、と表現してしまうと陳腐だけど、
それだけでなくアルゼンチン人男性の少し引き気味な感じ
(イタリア人のようにLatino、Latinoしてない感じ)
をものすごく上手に表現する俳優さんだなあと思いました。
アルゼンチンの移民問題はイギリスなどのヨーロッパ諸国と
違ってまた独特で、特にユダヤ人の人たちは複雑な
立場におかれていることでしょう。しかしアリエルという
一人の男性の姿を通じて説教くさくなく
コミカルに爽やかに描いているところが◎。
特にポーランド人になりたい理由を述べるシーンが
愉快すぎて笑えました。すごくかわいい!
ロケ地である、ブエノスアイレスのオンセ地区は
語学留学中訪れてみました。決して治安の良い地域では
ないけれど、映画は非常に忠実にあのエリアの雰囲気を
描ききっていたと思います。本作の名監督に拍手!!