よみがえる自作朗読の世界~北原白秋、与謝野晶子、堀口大學ほか~
むかし(30年くらい前だったか)、レコード時代にコロムビアより、ほぼ同じ布陣で2枚組朗読復刻がでたことがありました。与謝野晶子のほとんど巫女さんのような神がかった朗読の迫力や、白秋の独特の間合いの取り方、斎藤茂吉の、東北なまりの訥々とした朗読、萩原朔太郎の鬼気迫る声・・・など、そのときにはじめて聞き、98年CD化されたときは本当に嬉しかったです。
ただ、そのとき残念だったのは、レコードのときには収録されていた、坪内逍遙自身の訳・朗読による「ハムレット」一節が収録されていないと言うことでした。
逍遙は、いま流行りの日本語の朗読について、文学者として最初に本格的に朗読法を研究したひとでしたし、明治末には、その玄人の歌舞伎役者を思わせる声色で、早稲田の授業に出席していた正宗白鳥や近松秋江などを魅了してしまったひとでした。その、伝説の声色がここに復活している!という、かつてレコードを聴いたときの興奮を思い出すにつけ、それを省略してしまっているCD版への不満はいかんともしがたかったのですが、30年ぶりに、(オリジナルからすれば70年以上にはなるでしょうか)ついに、出るんですね!
ザ・シェークスピア―全戯曲(全原文+全訳)全一冊
すごい本である。まず、個人がシェークスピアを全訳するというのは大変なことだと思う。それが一冊の本としてまとまっている。しかも、全作原文付きである。
一冊になっているが故に、ぎっしりつまり過ぎて読むのに疲れるが、この本の使いかたとしては、まず、他の方の訳を読んで気になったところを坪内訳でも読んで、同じページ内にある原文で確認するというのがいいと思う。
とにかく資料的価値が大である。
当世書生気質 (岩波文庫)
明治に書かれた文章のため、
少しわかりにくい部分もあります。
しかし、ストーリーとしては、
二転三転と非常におもしろい。
昼メロになりそうな感じです。
しかし、ここに出てくる書生が
当時の大学生だとすると、
昔の学生はよく勉強した、というのは
ウソなんですかねえ。
学校行かず、門限破って遊んでばかり。
ちなみに、この内容、現代だと
キャバクラ嬢と大学生のラブストーリーに
なるんでしょうか・・・
コロムビア創立100周年記念企画 文化を聴く
文豪たちの自作朗読という、
こんな音源あったんだって感じの超レアなCD。
朗読ってただ読めばいいってものではなく、
演技力、滑舌の良さ、間の使い方といった「技術面」と
その人の個性が出る「声の質」
という2点が重要だと思うのですが、
この観点からこのCDを評価すると
全体の感想としてはかなり良い感じです♪
読み方のうまい朗読もあれば、
余り上手ではないけど味のある朗読もあったりと
楽しめる朗読ばかりです。
また朗読をそのまま楽しむのではなく、
ファンである文豪の声を聞きながら想像をふくらませる
という楽しみ方が出来るのも本品のいいところ!
以下、気に入った朗読者です。
「北原白秋」…一人で6トラックも入ってるだけあって、味のあるいい朗読です。軽く棒読み気味なのですが声の雰囲気が良くずっと聞いていられます。そして途中から入ってくる歌(詩?)を読み方もちゃんと節を付けてて良い感じです。
「与謝野晶子」…何言ってるか分かんないのですが全体の雰囲気はとても心地良い感じです。この声は癖になります!!!!!!
「高浜虚子」「堀口大學」…基本棒読みなのですが、間の使い方が上手いです。
「河井酔茗」「土岐善麿」「釈迢空」「太田水穂」「尾上柴舟」…どこか純邦楽に通ずるような節をつけた読み方は素晴らしいです!
「野口米次郎」… 神社で祝詞あげてるのかってくらいのかしこまった朗読。これはこれで味があります。
「川路柳虹」…下手ではないのですが、ただ音読してるだけといった感じです。
「西條八十」…あまり上手じゃないのですが、人柄が出ている読み方で聴いててほのぼのしてきます(*'ω`*)
「坪内逍遥」…めちゃくちゃうまいです!!!!!!
演技がうまい!!!!!!!
滑舌がいい!!!!!!!!
間の使い方うまい!!!!!
声がいい!!!!!!!!!
ファンになりました(*'Д`)
長唄全集(二十)新曲浦島/多摩
明治後半に作られた割と新しい長唄三曲のようです。
坪内逍遥の詩の世界が美しい「新曲浦島」。某お家元の御曹司が踊っているのを観て思わず感涙し、調べてみると坪内逍遥作詞ということで余り耳馴染みがないけれども買ってしまいました。「浦の苫屋の秋の夕暮れ」というか、そういう古歌的な美しい想像の海の世界から、船乗りの日常の海へと劇的に変化しながら、歌詞がきっちり曲に乗っているのはさすがです。それに漁師の振りを付けた舞踊家もすごいと思います(曲自体には浦島太郎は出て来ないけれども、舞踊を観ると「浦島太郎かな?」と思える)。
「しずやしず、しずのおだまき」がキャッチフレーズの「賤の苧環」。義経と別れた静御前が頼朝の前で義経恋しの舞を舞うという、語り物のように芝居要素の強い曲です。明治末期の曲というのは知りませんでしたが、歌詞の一貫性や史実の細かい参照などは演劇改良運動なんかの影響かなと思いました。
多摩川は初めて聴きましたが、歌詞に如何にも近代的で堅い部分があり、違和感があります(曲は普通の長唄)。