庭先案内 6巻 (BEAM COMIX)
庭先案内第6巻です。月刊雑誌ゆえか刊行ペースが遅く、また連載雑誌を購読していないため、早く読みたくてやきもきしながら発売を待っていました。(最近は買う漫画も減ってしまいましたが、数少ない継続して買っている漫画の一つです)
短編連作ながら、ところどころにストーリー性のあるシリーズも継続しています。(幻燈機、関西姉妹など)メルヘンやファンタジーという形容詞が似合う作品とよく評価されていますが、それに上乗せして、作者自身の独特な呼吸というか作風が色濃く反映されており、個性的な絵と相まって独自の地位を確保している名作だと思います。
…しかし帯の「フィナーレ」という文字を見て本当にガックリしてしまいました。短編連作がゆえこれからもどんどん続いていくと思ったのに…。須藤真澄さんの次回作に期待しよう…
っと思っていましたが、作者様のHPを見ると、「庭先案内」の内容を踏襲した新作の連載が再開されるとのこと!!!これは本当に嬉しい限りです。たぶん刊行ペースは今まで通りだと思いますが、ゆっくり待とうと思います。
これから読もうと考えている方へ 短編連作なので当巻から入ることもできるかと思いますが(事実上最終巻ですが)、上述の通りストーリー展開があるものもあるのでやはり1巻から読んだ方がいいと思います。短編の間にストーリー性を持たせるというのも、この漫画の重要な手法の一つであると思います。
自信を持ってオススメできる作品です。
ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で
ヘンリー・ダーガー(米1921~1973)という人物は知的障害施設を16で出所、71歳まで病院の下働きを勤めた市井の人であり、いわゆるアウトサイダーアーチストの中でも不遇の人生を送ったといいます。
ある日、写真家である彼の家主が、永年人知れず創作し続けていた彼の作品群を発見します。それは何千頁にもわたる日記や記録。そして15巻・1万5千頁にもおよぶ非現実の王国を描いた絵画世界だった。
それは雑誌等からの写しを含めた子供たちを主役にした残酷な戦争の物語であり、まさに誰にも見せるつもりも無く描かれた孤独の作品群。
他のレビュアーが指摘されてますが、私自身世田谷美術館の展覧会で実物を観たのですが、薄っぺらな大きな紙に描かれた世界は危うくも異様であり、アニメを彷佛とさせる少女らが戦火に逃げまどう世界は、現代アートとして紹介されても違和感がありません。ヴィトンのデザインでも知られる現代美術作家・村上隆が現代美術にアニメのモチーフを持ち込みましたが、その昔こんな作品が人知れず描かれていたとは...闇に葬られず本当に良かった。
この孤独な作品群がものがたるものは、認められず不遇のアーチストには希望と勇気を与えてくれることでしょう。
泡と兎と首飾り―猫十字社傑作集 (BBMF BOOKS)
お茶がお酒になりました。かつて作者の作品を桃源郷としていた私には、作者の軌跡をたどると共に変わらぬ世界観(そして成長)を愉しむことができ、とても嬉しい単行本でした。この作者は作品によって作風が変わります。絵も世界観も異なりますが、どの作品にも猫十字社ならではの味があります。この本も作者の多面性を編集していました。「もんもん組」のギャグや毒はありませんが、リアル作者(?)の毒やハートは健在。少女漫画界の大御所でないけど異彩を放ち存在感ある作品を描く人だとあらためて思いました。