世界遺産神々の眠る「熊野」を歩く (集英社新書 ビジュアル版 13V)
熊野にはこれまでに4回、行きました。
行くたびに、山深さと海深さ、それに興味深さを実感しています。
熊野の神、仏、いろいろな気配。ことばにしづらい、熊野で私が感じてきた
多くのことを、改めて気づかせてくれるような本に出会いました。
「熊野の神はどこから来たのか?」「海の熊野へ」「石の力」などの章があり、
どれも謎解きのようにワクワクしながら読めて、これまでの熊野旅ではまったく
気づかなかった、知らなかったことを教えてもらいました。
読み進めるにつれ、「聖地研究の第一人者が私にも理解しやすいように
書いてくれた本」という気になります。
次の熊野行きは、必ずこの本を持って行きます。
熊野の旅が、奥深いものになるに違いありません。
神と仏の道を歩く―神仏霊場巡拝の道公式ガイドブック (集英社新書 ビジュアル版 10V)
“公式ガイドブック”を名乗るだけあり、150を超える神社仏閣の由緒縁起や見どころが、各寺社見開き2ページでコンパクトに紹介されている。
通称・俗称と正式名称を併記したり、宗派や本尊の名称を読み仮名入りで記載するなど、非常に気配りがされている。遍路巡礼者はもとより、私のような不信心な者にも、教養や常識を弁える意味でとても参考になる。
本書のウリは、寺社の建造物を写真でなく鉛筆描きの細密画で紹介していることだ。
大ベテランから若手まで約30人の描き手が分担して描いたモノクロ世界には、しかし、写真と見紛うばかりの、ときには写真が語り得ぬディティールが盛り込まれ、見事と言うほかはない。
たしかに、写真、とくにカラーでは、各寺社の一種ミステリアスな荘厳さや居住まいを必ずしも上手く表現できるとは言い切れまい。要らぬ固定観念を与える恐れもあろう。それに、建造物の最も魅力的な姿を切り取ろうとしたとき、あるいは周囲の木々や不自然な人工物が邪魔をしたりイメージを損なったりすることもあり得よう。
しかし、変な作為を加えたと見るのは筋違いだ。むしろ、印象を散漫にする懸念雑念を払拭するという意味で、この手法は成功していると思う。
残念なのは、地図の扱いだ。
各ページ右下隅に3センチ四方程度の扇形で嵌め込まれているが、紙面の制約で鉄道や道路などが十分に描かれていない。中には、近在の目標物が道路1本だけしかない、というものさえある。
また、図面により縮尺がマチマチらしく、その明示もない。他の寺社と比較して距離感や所要時間の見当をつけにくいのは大きな減点材料だ。巻末にいちおう折り込み地図はあるが、これにも縮尺明記がない。
たとえば、各章の冒頭に地域の中域図を入れ(当然縮尺表示も)、周辺との相対関係をきちんと把握できるようにするべきではなかったか。