Coyote(コヨーテ)No.46 特集 ホンマタカシのたのしいポートレイト写真
ホンマさんが、池上彰さんのようにわかりやすく
ポートレイト写真の面白さを解説してくれるわけではありません。
むしろ、読みながらちょっと混乱します。でも不快ではありません。
いろんなやり方、考え方でいいんだよね!
良い悪いの評価など怖れるに足りず、
思いついた無茶なアイデアをどんどん試してみたらいいんですよね!
という気分にさせてくれます。つまりここでいう混乱とは、
さまざまな固定観念や約束事や決まり事を断ち切って、
自分なりのポートレイト写真をつくってみればいいじゃないですか、
とそれを実践しているホンマさんに言われて、世界が一瞬にしてリセットされて、
そんなこと考えたこともなかったあ・・とどぎまぎしている感じです。
情報を伝える雑誌は多いですが、そんな気持ちにさせてくれる雑誌記事は、
しかもポートレイト写真というごく身近な話題をもってこんな風に
世界をひっくり返してくれる雑誌の特集って少ないですよね。
「考え方を考える」ことの好きな人にはきわめて刺激的。
しばらくは、この特集から自分で応用問題をつくりながら、
デジカメでいろんなポートレイト撮影にトライしてみようと思います。
マザーウォーター [Blu-ray]
人の人生は流れているんだな〜・・・
一つのところに留まることはないんだな〜・・・
分かっているつもりでも・・
この映画・・大好きな邦画の一つです!!
特に・・河原に置いてある1つの椅子の存在が、それに座る人の気持ち・・分かる気がします!
酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [DVD]
主人公が家族の元に戻る為、アルコール依存症を克服しようとする姿がリアルに時にはコミカルに描かれていました。
アルコール依存症の描写は、驚きの連続。毎日朝から晩まで酒を飲み続け、身体はボロボロ。突然意識を失ったり、何度も吐血したり、幻覚が見えたり...。
漫画家である妻に対する暴言と暴力。壮絶な症状の数々に唖然とするばかりでした。
院長と由紀の会話でアルコール依存症という病について話があります。「他の病気と決定的に違うのは、誰もほんとうには同情してくれない。場合によっては医者さえも」その言葉は、胸に深く突き刺さります。
また、戦場カメラマンである安行の心中を慮る由紀に「地獄を見た人と、その地獄の中で生きている人とどっちが苦しいでしょうか?」との言葉も投げかける。
当人は、あの世行きにリーチがかかっている状況でなお、「今日こそカレーが食べられるか」と昼ごはんに執着する。それがまたリアル。浅野忠信のどこかひょうひょうとした演技のおかげで、主人公の心が回復して行くプロセスが穏やかな時の流れに思えるのがいい。また、アルコール依存症を克服して退院する前に体験談をスピーチするシーンでの浅野忠信の表情、セリフ回しが素晴らしい。
そして、黙々と仕事をしながら、母として妻として安行を支える由紀を演じる永作博美が素晴らしい。このクールな、というかさっぱりな、というかサバサバした感じのこの作品の空気感を創りだした一番の功労者でした。それだけに終盤のキッチンの玉葱を切りながら号泣するシーンには、思わずもらい泣きさせられました。彼女の強さと弱さの演技がいく層にも重なって、作品を味わい深いものにしているのは間違いないです。
ラストの浜辺のシーンが、哀しいのに安らぎを感じさせ、余韻として残ります。バックに流れる忌野清志郎のうたも心にしみる...。
「マザーウォーター」 [DVD]
ドラマ『すいか』以降、そのスタッフの内、二人がかかわる作品を追いかけています。
一人は、脚本家の木皿泉氏。
もう一人が本作の企画・霞澤花子氏。『かもめ食堂』『めがね』『2クール』『プール』はすべてそうです。
以前「ピクトアップ」という雑誌で『かもめ食堂』に関する霞澤氏のインタビューが掲載され、単なる企画だけではなく、実際は総合プロデュースもしていたと書かれていました。おそらくは、本作もそうなのではないでしょうか。
今回はメインの女優さん4人が『すいか』のレギュラー(光石研さんもゲストで出演されていました)。何よりも、そこに反応してしまいました。そして、『かもめ食堂』などと同様、物語のない物語、不思議でゆったりとした「日常」の描写。「日常」の描写で押し切るのは難しいことなのでしょうが、そこにこそ面白さがあると思います。舞台は京都ですが、観光地でない「日常」の京都の風景も楽しいです。
波乱万丈の物語が悪いとは思いませんが、こういった、ゆったりとした時間を描いた、心地よい“退屈”さを持った作品も大切だと思います。