“文学少女”見習いの、卒業。 (ファミ通文庫)
長編「“文学少女”見習いの、寂寞。」、掌編「ある日のななせ」、短編「“文学少女”見習いの、卒業。」を収録。
「寂寞」は何故か井上心葉に急接近してきた有人の冬柴瞳の行動の理由を、日坂菜乃が追求して行くお話。その結果として、かつて自殺した一人の少年と、一人の先生が関係していることが分かる。モチーフは「こころ」。
誰かにとってもただ一人の人になりたい一心で行動しただけなのに、状況が少し特殊だったせいで悲しい結果になってしまった出来事と、同じような状況を作られてもその人を信じ続けることで誤解の壁を乗り越えてしまう少女が対比されている気がする。
これは、菜乃が別れの予兆を感じる物語でもあり、心葉にとって過去が過去となっていることを確認した物語でもある。だけど、琴吹ななせは心葉に都合よく使われちゃってる感じがするな。
「卒業」は心葉卒業までの一ヶ月ほどを描いた作品。モチーフは「桜の園」。
最後の思い出作りとお別れの儀式みたいなものだけれど、心葉からの最後のプレゼントは格好良い。いずれななせにも同じものをあげて欲しい。そうじゃないと、記念撮影だけで喜んでいるであろうななせが不憫な気がする。
最後に次巻、次々巻の予告がされている。ああ、時間軸が進むんだね。
満月の夜はあなたと (フローラブックス)
恋するヴァンパイアシリーズの4作目で、上の兄3人はヴァンパイア、下の妹がウェアウルフという設定です。今作はシリーズ中でずっと昔に死んだと思われていた妹が主役のパラノーマルロマンスです。2番目の兄夫婦が経営するカラオケバーに立ち寄った際に、思いもかけず自分の意思とは無関係に、理性も道徳もそっちのけで有無を言わさず引きつけられてしまう人間の男性との出会います。(実はその彼も同じ様に引きつけられていたのですが。。)その後彼女からの強引なアプローチで、その夜の内に性急に一夜の情事を結ぶのですが、その繋がりが更にお互いを一度限りの関係で無視できない存在だとしらしめる事になるのです。訳合って過去にウェアウルフに変異させられてしまい未だにそれを受け入れられず、人間に戻れるワクチン開発に励む彼女と、過去に運命の女性と信じてやまなかった彼女を自分のせいで死なせてしまったと思い込み、もう誰も愛する事はできないと心を閉ざして何年も生きてきた人間の男性。その男性が獣医という設定には、うまいな!と思わずにはいられませんでしたが、ヴァンパイアロマンス好きの私としては、ウェアウルフの女性視点の展開と相手がごく一般的な人間の男性だったと言うところでイマイチのめり込めませんでした。そもそもこの作品を読もうと思ったきっかけは、シリーズ1〜3作にハマり、締めくくりとなる今作を読まずにはいられなかったからです。シリーズを通して展開されてきた物語の進行や魅力的な兄達は健在で今作にも登場してきますので、ファンなら手にしてしまう作品でしょう。ヴァンパイア物はあまり好きではないけれど、シェイプシフター物のロマンスが好き!という方であれば、最初の3冊を読まずともあまり気にせず楽しめると思います。著者のキャシーラブは、読者を引きつけてやまない魅力的な人物を造り出すのに長けている作家だと思いますので、パラノーマルロマンスで何かないかな〜?と探している方は、彼女の作品は読んで損は無いと思います。今作が星3つという評価なのは、シリーズ3作が個人的にはとても楽しめたので、それらに比べるとハマリ度が低かった事が要因です。