原発事故を問う―チェルノブイリから、もんじゅへ (岩波新書)
もんじゅから思い出されるチェルノブイリ。これがこの本のテーマでしょうか。しかし、話の大部分はチェルノブイリです。筆者はチェルノブイリの専門家、といっても過言ではないような人みたいですし。
まずはチェルノブイリともんじゅとの共通点について。2つ挙げられています。
1.「想定外」の事故と対応の遅れ
これはひょっとしたら、福島原発にもあてはまるかもしれません。「想定外」の揺れによって原子炉が被害を受け、にも関わらず政府の対応は遅かったですからね。
2.通報の遅れに始まる意図的情報操作
これは福島原発でもあったのでしょうか。私にはわかりかねます。
チェルノブイリは「日本では絶対に起こりえない事故」らしいです。大多数の認識としては。しかし筆者の認識は違っています。実際、福島の事故もレベル7ということで、一応は同レベルです。もっと早くにこの認識を改めていれば、と思わずにはいられませんでした。ついでと言っては何ですが、福島でもあったな、と思った表現を引用しますね。「放射線汚染の無間地獄」です。つまりは風評被害ですね。あ、似てるなとこの点でも思いました。
さて、チェルノブイリ事故について簡単に語ります。この事故は人為的だと私は思っていました。ただ、事故そのものは原子炉の欠陥が原因らしいです。しかし、その後の対応が被害をさらに大きくしたとはいえます。例えば、情報規制ですね。「パニックは起こすな、機密を保持せよ」。これが政府の方針だったとか。そりゃ被害も大きくなりますよ。あとは、原発作業員の認識の甘さですね。原子炉が壊れたということをしっかりとわかっていた人はわずかだったみたいです。そのせいで、無意味な復旧命令により多くの命が犠牲になりました。では誰を責めればいいのか。筆者は政府を責めています。そういえば、チェルノブイリの一号炉と三号炉は稼働中ということです。政府の良識を疑いたくもなります。
最後に地元の石川県が挙げられていたのでその話。長々とは語りません。つけこまれる「地方の窮状」。この表現に尽きますから。結局、大都市には作られず、地方ばかりが犠牲になる原発事業。何かと問題アリですね。
原発事故緊急対策マニュアル 放射能汚染から身を守るために
内容は適確で、原発の多い日本に住む人に不可欠な知識だと思われます。もっと内容を修練し、さらに分かりやすく小学生にもわかるモノから、外国語バージョンまで色々と作り税金で配布すべきだと思います。文科省の仕事でしょう。
ディスカバリーチャンネル ZERO HOUR:チェルノブイリ原発事故 [DVD]
戦後日本で最悪の事故である「東京電力福島第一原子力発電所事故」から半年が経った。
しかしながら、「いつ」、「誰が」、「どのような」意思決定をしたのか、
国民は責任の所在を知らされないままである。
もちろん、本当の責任の所在、誤りの原点がどこにあったのかは国民は理解している。
しかし、マスコミが政府および電力会社の内部を真剣に検証し、責任を追及しようとはしないのである。
本来であれば、意志決定におけるプロセスで誰がどのような発言をして、
誰がどのようなミスをしたのかについて真剣に責任を追及するのがマスコミの社会的役割だろうと考えるが、
この「ディスカバリーチャンネル」のように、意思決定における各人の動きを見ようとは
日本のマスコミは考えないようである。
そういう点で、この「チェルノブイリ原発事故」のドキュメンタリは日本人にとって重要なサンプルになるだろう。
もちろん、チェルノブイリと福島は全く異なる事例ではある。
しかし、人為的なミスが長きに渡り人々を苦しめる結果となったのは同じであり、
このように内部の人間の動きの検証がなければ、本当に日本は没落してしまうと危惧する。
最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか
作者は私たちの周辺のテクノロジーを総称して「われわれのマシン」と呼んでいる。
「われわれのマシンのサイズとパワーは桁はずれに大きくなったが災害の引き金を引くには
さほど大きな力を必要としない」という一文はハイテクに守られている現代の脆さに対する
警告が込められている。
原子力発電、ジャンボジェットなどの交通、工場、スタジアムなどの様々な例が挙げられ
事故が起こるまでのプロセスが克明に記されている。
星4つにしたのは、図と本文の連動性が少し足りないと感じたから。
内容については、敬服する。
終盤に出てくる1900年にミシシッピで起こった蒸気機関車の衝突事故の原因が、あまりにも
JR西日本の事故と一致していたのには戦慄した。
本書はこれから起こることも予言していると思う。