69 sixty nine (集英社文庫)
今春、映画化されるとのことで1年ぶりで読み返しました。村上龍の小説で「69」というタイトルからすると、またエロイ描写たっぷりの作品ではと思われる方も多いと思いますが、「69」というタイトルは1969年に高校3年生だった村上龍自身のエピソードを綴った自伝的小説であることから取られています。内容は、著者自身が「これは楽しい小説である。こんなに楽しい小説を書くことはもうないだろう」と述べている通り、本当に面白い小説で、村上龍作品に限らず面白い小説のTOP10に入るであろう作品です。でも、そこは村上龍のこと、文章のあちらこちらにメッセージが込められています。それを要約すると「私から大切なものを奪おうとした退屈な連中に復讐する唯一の方法は彼らよりも楽しく生きること」。そして「楽しく生きるためにはエネルギーがいる。戦いである。私はその戦いを今も続けている」こと。世の中の枝葉末節に嫌気や怒りがさした時、「ああ、ばかげたことで悩むのはやめよう」と思わせてくれる本です。