R.シュトラウス:ツァラトゥストラかく語りき
複雑かつ美しい響きの交響詩をこれ以上はないと言える程の爆発力と推進力、美しき爆音、轟音で表現した名演。
ニーチェの同名の哲学書が云々と、うん蓄を含んだ演奏の味がどうたら言う人には、この演奏の価値は未来永劫、分からないと思う。
実際にニーチェの同名の書を読んでも、多くの人は完全にはその意味を理解できないのに、この曲に哲学的な意味を求める事の無意味さを理解できる人はこの演奏の価値・本領が分かると思う。
音楽とは音の響きであり、音以外の何者でもなく、音楽そのものにひたりたい。豊穣で美しく、華麗で力強いオーケストラと指揮者の演奏は「純音楽的」と言う表現を超えている。
初めて聴くひと、もうこの曲は聞き飽きたと言える人に合っていると思います。
アナログ録音ながら、全盛期のデッカサウンドは今聞いても素晴らしいのひとこと。
だまされたと思って聴いてみることをお勧めします。
世界中を虜にする企業~ZARAのマーケティング&ブランド戦略~
ZARAというブランドへの職業的な興味から日経の広告を見てすぐ書店で入手したのですが、読むにつれZARAという特定のブランドのことを忘れ、日本の多くの企業が忘れているのはこういうことでは?と気づかされる一冊でした。
使われている比喩がセックスであったり、固いビジネスの本を読みなれた方には抵抗があるかもしれませんが、人類史上最も豊かに物と情報が手に入り、個人が自由な選択をできる今という時代に、その商品やサービスを選んでもらうためには何が必要か、を著者の「ZARA」での経験や、他の「セクシー・カンパニー(アップル、とスターバックスがよく取り上げられています)」の例を挙げながら、「官能」という人間的な要素を中心に提案しています。著者が語りかけるように、頭ではなく心で、この本の内容を感じると、きっと、なるほど、と思っていただけるところがあるのではないかな。
ユニクロ帝国の光と影
この不況において、一人気を吐く超優良企業ユニクロ。その創業社長である柳井氏の人物像に迫り、
ユニクロの闇を暴こうとする異色作。
作者は前作でアマゾンについても同様の作品を描いている。
当然のことながら、ユニクロの企業体制や柳井氏について終始ネガティブ論調で展開していく。
しかしながら読み進めていくと店長の過剰労働(残念ながらこういった会社はいくらでもあることは
多くの人が判っている事)はともかくとして、人事における処遇や、
中国工場の実情においても、優良企業の創業社長の会社であればそんなものだろうと、
寧ろ週刊誌のごとく無理矢理悪徳企業に仕立て上げるような書き方に違和感を覚えた。
またZARAとの比較においても、社員数の違い等でユニクロを非難しているが、
それはあくまでもビジネスモデルの違いであり、当然ZARAにも問題点はあるわけで、
ZARAの売上が下落したら、社員をリストラすることは間違いないことである。
確かにユニクロ一人勝ちの状況により、最近はユニクロを礼賛する提灯記事が多かったため、
本著作により別の視点からの示唆が与えられたことは評価できる。
またユニクロの中国工場については、初めて読む内容だっただけに大変興味深かった。
綿密な取材が為されていると感じただけに、中立視点での客観的な意見が聞きたかった。