輝く日を仰ぐとき - ベー・チェチョル
10月から東京を皮切りにして始まったベー・チェチョルさんのリサイタルを、北九州市で聴いてきました。手術前の歌声をCDで聴いていたので、今回のリサイタルでは、その時の声量の4割ぐらいでした。しかし、このCDに収められている歌声のように、一度は失った歌声を奇跡的に再び与えられてことへの深い感謝を込めて歌われているその歌声は、かつての声量はなくとも、聴く者に深い感動を伴って心の中に沁みわたってくることでしょう。かつての力強さは奪われたけれども、生かされていることへの喜びにあふれる歌声が素朴に響いてきます。
かつてヨーロッパでテノール歌手として認められてこれから活躍が期待されていた矢先に、甲状腺ガンの手術で声帯と横隔膜の神経を損傷して声が出なくなってしまってしまいました。その時の絶望感と苦悩とは、どれほどのものだったでしょう。
その深い絶望の淵に立たされたけれども、音楽プロデューサーの輪嶋東太郎さんらの支援者によって、声帯機能回復手術を京都大学の一色信彦名誉教授を通して受け、それから3年間韓国で学生たちに声楽を教えつつリハビリを積み重ねてきて、このCDの制作と、リサイタルの開催に至っています。
新垣勉さんのCDも素晴らしいのですが、こちらは本格的なテノール歌手によるプロの演奏を楽しめる歌声になっています。
ボケない技術(テク)―「もの忘れ外来」の現場から
とにかく、わかりやすくて、おもしろい。いままでのこの手の「ボケの予防」の本は、認知症の説明がわかりにくかったり、予防法に科学的根拠がなかったりするものが多かったのではないでしょうか。その点、この本は、病院の現場で沢山の患者さんをみているお医者さんによって書かれている臨場感が漂ってきます。毎日の生活をどのように暮らしたらボケないで生きていけるかが、わかりやすく書かれていて、思わず引き込まれました。認知症だけではなく、私たちの脳のしくみの理解にも役立ちました。
ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間 (ノンフィクション・隣人たちの哲学)
5月?日にNHKの「プロジェクトX」で取り上げられた甲状腺専門医の著書。ベラルーシという全くの異国に単身飛び込んだ著者が、旧ソ連崩壊後の経済困難、治安の悪さ、縦割り行政の弊害などを乗り越えながら、チェルノブイリ原発事故の影響で甲状腺がんになった子どもたちの治療にあたっていく様子を描いている。実際にむこうの人たちと生活を送った人だけが書ける内容で、面白かった。難しい問題だが、分かりやすく書けている。
桜の森の満開の下
頭っからシッポの先まで、これでもかと名作を叩きつける、サディスティック・アルバム。こんな楽曲の鞭でシバかれたら、ヘロヘロになっちゃうけどそれも快感だ。「心の火事」は、椅子をよく知らない人でも、オオッ!と思えるハズ。
是非聴いてみて下さい。
誰も寝てはならぬ(特典映像付)
べー・チェチョルさん、とても魅力的なテノール!!ソプラノの関定子さん、ピアノの呉恵珠さんとの共演で、オペラを解りやすく教えてくれるコンサートで聞きました!!冨士眞奈美さん、吉行和子さん、今はもう亡くなられた岸田今日子さんと、ヴォイス・ファクトリーの輪嶋東太郎さんのおしゃべりで、オペラの解説と、女優さんならではの歌詞の朗読が新鮮でした。べーさんは韓国の方だそうですが、イタリア人の歌としか思えないくらい太く、包み込むような歌声で魅力的で、男性的で、初めて聴いて夢中になったのもつかのま、甲状腺がんという病魔に冒され、歌を歌う事が出来なくなったと、聞きました。コンサートで寄付をしたりして、歌えた頃の映像を見ながら、輪嶋さんが近況を報告されていましたが、年末の、NHKのドキュメンタリーで、ベーさんと、べーさんの再起を陰ながら支える輪嶋さんの番組を見ました。家族でさえ憎しみあうほど悲しい事件が多い現代に、他人、それも国の壁をも越えて、こんなに感動的な友情があるのかと涙が出ました。ベーさんは現在はリハビリ中でかなり歌声を取り戻したそうです。このCDにはありませんが、ドキュメンタリーで歌っていらした賛美歌には心から音楽の素晴らしさを感じました。CDは全盛の頃の歌が入っています。このCDを買うとベーさんの支援にもなるそうです。この歌声をまた聞ける日がくるのを楽しみにしています。