すし屋の常識・非常識 (朝日新書)
すし屋に入るのは、敷居が高いと気がひけていたが、この本を読んだから、懐具合は別としてももう安心だ。どんな順番に握ってもらったらいいのか、主人と何の話をしたら、それなりの粋な客になるのか、、、。また文化人とすしとの関係が随所にちりばめられており、それが、この本のもうひとつの魅力でもある。なるほど日本人にとってのソウルフードたる所以がわかる。それにしても著者はすしと向かい合って、一体どれくらいの年月になるのだろうか。鮮明に覚えている味、時には職人さんにハッキリ物申す姿勢はかっこいい。マグロの養殖のことや世界のスシも紹介しており、スシ話を肴にすしをつまみに行きたくなる。
ロジャー・マーガトロイドのしわざ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1808)
Gilbert Adairの『The Act of Roger Murgatroyd』(2006年)の翻訳。
だいたいタイトルから分かるとおり、『アクロイド殺し』をモチーフにしたミステリである。と思うと、いきなり乱歩っぽさが出てきたりして、びっくりさせられる。
アガサ・クリスティーの全長編66冊を読破してから書き始めたということで、密室、雪で通信も交通も断たれた屋敷、元名探偵、いずれも一癖ありそうな登場人物たちと、舞台だてはいかにも。小ネタも多い。
そこに、半分はパロディ的な解決が接合されている。試みとしては充分に面白いものだと思う。ただ、ミステリとして評価するといわれれば、答えはノーだろう。いま、これをやることの意味が分からないし、小説としての面白さもいまいち。
また、翻訳が良くない。