マカリイ
名曲「昴」のアンサーソング、というフレコミの「マカリイ」を、いささかセコイのだが、アルバムになるまで待って買った。当然、「四季の旅」シリーズは全曲収録されているものと思っていたのが見事に外された。収録されたのは3曲だけだった。
それはさておき、私はこのアルバムを入院中に聞いたのだが、「マカリイ」の「ヨーソロー ヨーソロー」の掛け声にはずいぶん励まされた。おかげで元気に娑婆に戻ることができた。ありがとうを言いたい。
人生という旅の終点近くを生きている私には、「経典」のように聞こえる歌ばかりだ。
でも、「四季の旅」はシングル盤を買わなければならないね。
旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ スペシャル・エディション [DVD]
動物をテーマにした映画には興味が持てなかったのですが、この映画は一味違いました。
感動しました。そして、考えさせられました。
動物園は単なる娯楽施設ではなく、動物の保護や繁殖に少なからず携わっています。
けれど、檻の広さが十分でない、生活環境が合わないという動物がいて
動物愛護団体の主張するように虐待同然の状況があるのも事実だと思います。
映画では3000人が旭山動物園の廃園に反対してデモを行っていました。
では、廃園を免れたとして、その内の何人が動物園を訪れるのでしょうか。
もし、市長が廃園にしないかわりに有料にして赤字を補填する、と決定していたら、
3000人の内の何人が入場料を払ってでも来園するでしょうか。
好きだから、さびしいから、もったいないから、動物がかわいそうだから・・・、
存続を希望する理由は色々有ると思いますが、それにはお金がかかるのも事実。
映画では新市長が予算を組んでくれたから良いものの、
そうでなかったらデモの3000人はどうしていたのでしょうか。
一利用者として深く考えさせられました。
ひとまず、今度近くに有る入場無料の動物園に行ったら、
動物の形をした募金箱に募金をしてこようと思います。
桜は桜/夢になりたい
夏(ツバメ)、秋(ロード・ソング)、冬(十三夜/マカリイ)、そしてこの春(桜は桜/夢になりたい)と続く「四季の旅」シリーズの“完結編”。老錬の境地に入ったチンペイさんがここでも「ひたすら散る」花を、人生になぞらえて歌い上げる。
「旭山動物園物語」の主題歌、「夢になりたい」がいい。特にアルバムにはまず収録されることはない「西田敏行&出演者バージョン」は、同じ歌とは思えないほど楽しい。失礼ながら、この1曲だけでも充分お釣りがくる。
映画のラストで、西田敏行演ずる退職した園長が歩いて行く姿を延々と写していたあのシーンに重なる。何かを成し遂げた男の背中だった。
ペンギン村に陽は落ちて
現代文学の傑作です。いわゆる、鴎外や漱石が活躍した近代文学以降、文学者たちはいったいどうやって新しい文学をやればいいのだろうとさんざん悩みました。アメリカでポストモダンという運動がブームとなり、やがて日本にはいってきます。ポストモダン文学は、あまり専門的なことは詳しくは言いませんが、大きな物語の解体、メタフィクション、パロディ、オマージュ、スリップストリーム、パステーシュなどの技法を用いています。
高橋源一郎は、日本のポストモダン文学の第一人者です。この小説は小説でありながら、小説の言語で書かれていません。マンガの言語で書かれているのです。サローヤンの「パパ・ユーアークレイジー」へのオマージュだろう序章で小説について述べ(メタフィクション)、マンガ(というかテレビアニメ)の人物を使い(パロディ、オマージュ)、奇想天外な話を展開させます。
いわゆる内輪の言葉というやつを使っていますが、高橋源一郎はそれが内輪の言葉が真に自由な言葉となる瞬間を夢見ている。アニメにおける内輪の言葉(固有名詞)を使い、小説において内輪ではないアニメの言語を用いて書かれたこの小説を、私は心底おもしろいと思うのです。
ただ、文学的なことを考える必要はありません。それ以前に、読んでいてひたすら楽しいです。
旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ [Blu-ray]
奇跡の再建を果たした旭山動物園の実話をベースにした作品。まぁ、プロジェクトXを映画化したようなもんでしょうか。
動物園再建までのプロセスをなぞるだけでなく、動物・環境保護等、さまざまな問題意識を盛り込みつつ、人間ドラマが語られます。ともするとチープなサクセスストーリーになりがちなドラマを、ちょっといろいろ詰め込みすぎた感がしないでもないですが、悲喜こもごもな人情劇に仕立て上げています。
ひとクセもふたクセもある飼育係たち、若手飼育係とベテラン飼育係が持論をぶつけ合ったり、思い通りにいかない「繁殖」に飼育係が苦悩したり、園一丸となって再建案を実行へ移したり、ベタながらも重みのある展開に、長門裕之、六平直政、塩見三省、岸部一徳、柄本明らの演技が光っていました。
ただ、準主役ともいうべき吉田(中村靖日)が、いじめられっ子で人間不信だったことと、旭山動物園の再生と二重写しとなるような格好で、人間としての成長譚が語られます。この吉田の物語がイマイチ弱いのが惜しい。
というのも、人間として吉田が成長していく描写がほとんどなく、吉田を支える若手飼育係(前田愛)の活躍とかもイマイチ物語に有機的に絡んでこない。また、仲間の事故死の通夜の席で、吉田が暴言吐いたりするんですけど、これもなんだか唐突。
さらに、ラストで園長を定年退職するさいに、吉田の母からの手紙が披露されるんですが、全体的にベタな物語の中でも、これはあまりにベタすぎます。
不満な点も多いものの、それでもなおこの映画に魅力を感じるのは、制作者が伝えようとするメッセージに迷いがないからでしょう。