日本脱出記 (ペーパーバック版)
エッセイストの井上春樹氏より、つぎのような書評を寄せていただきました。(土曜社)
関東大震災の犠牲者を忘れてはならない
―「イマジン」をBGMに読みたい本―
3・11の大地震に遭遇したのは羽田空港で、「帰宅難民」として川崎のコリアタウンを通過した。大地震とコリアの連想から、88年前の関東大震災時の朝鮮人虐殺を思い出した。壊滅的被害を受けた横浜の被災民の間に広まり、恐るべき速度で多摩川を渡って北上した朝鮮人暴動のデマ。多くの朝鮮人だけでなく、訛りのある東北出身者まで、興奮した自警団らになぶり殺された。地震や火災からは生きのびながら、理不尽な死に目にあったのは、朝鮮人たちだけではない。労働組合の活動家たちやアナキスト・大杉栄らも犠牲となった。震災後の混乱に乗じて悪事を企んでいるに違いないという憶測だけで、大杉は憲兵隊に拉致され、虐殺された。一緒にいた内縁の妻・伊藤野枝も、わずか6歳の甥の橘宗一までも巻き添えになった。
大杉が当時の軍部に何故これほど憎まれたのか、彼の遺作「日本脱出記」を読めばなるほどと思い当たる。厳重な監視の目を逃れて日本を脱出した大杉はパリに到着する。だがめざす国際アナキスト大会は延期され、労働者の街・サン・ドニのメーデー会場に向かう。そこで聴衆に街頭行動を呼びかけた。得意のフランス語で演説したのだ。東洋人のアジテーションは喝采を浴びた。逮捕された彼を追いかけ、人々は革命歌を歌って励ます。移送されたのはラ・サンテ(健康)という皮肉な名称の刑務所だ。そのせいか獄中の大杉はすこぶる元気だ。もともと飲めないワインを試してみたり、愛娘・魔子に贈るメッセージを綴ったり、獄中生活を楽しんでいるかのようだ。
外国語を駆使して秘かに海を渡り、各国同志との交流を拡げ、その活動をメディアに流して宣伝し、資金を得る。堺利彦の「売文社」で学んだ手法を活用した「闘い」を大杉は果敢に実践した。これほど活発に反抗する敵を権力が放っておくわけがない。国家に害をなす危険人物として悪宣伝を流し、甘粕大尉たち憲兵に虐殺させたのだ。しかも3人の遺体を古井戸に投げ込み、犯行の隠蔽を図った。大杉栄という人物も、精神も、日本帝国には存在しなかったかのように。
だがその試みは失敗した。大杉たちの思想は、自由を奪われ、貧困に苦しみ戦争に反対する人々に受け継がれてゆくのだ。たとえば、大災害の後、決まって流されるジョン・レノンの「イマジン」の歌詞を注意深く読んでみればよい。この歌が描く世界こそ、アナキスト・大杉の求めた世界そのものではないか。
「日本脱出記」は、彼の思想を理解するための格好の入門書である。
井上春樹(エッセイスト)
華の乱 [DVD]
この映画は吉永さんが与謝野晶子を演じた興味深い映画だが。それはまた。共演した池上季実子さんのこと。佐和子のレビューで名前を間違った。「季実子」です。彼女は私の従兄弟の慶応ボーイの骨董屋(麻布十番から六本木駅前へ引っ越す)の友達の奥さんだった。世田谷の家も隣というか長屋みたいな構造。旦那も骨董屋。何度か会っている。化粧の濃い女だな。経歴を見るとなんとNYシチー生まれ。外人かと思ったら親父が商社マンかなんかだろ。1959年生まれだから51歳か。学歴は玉川大学中退だから想像がつく。頭の程度は。おじいちゃんが例の河豚の毒にあたって死んだ歌舞伎の坂東三津五郎。歌舞伎の縁で芸能界に。全然興味のない女優さん。従兄弟が寿司をご馳走するといったら季実子さんもついてきた。まあ長屋だから。巨人軍の選手が来るという寿司屋。それほど美味いとも思えないが季実子さんビールを注いでくれた。そしたら店の客があのーサインをして頂けませんか?と親父が来たら「食事中です。遠慮してください」と断った。サインくらいしてやればいいものを。性格のきつい女だな。なんか雰囲気がしらけた。ほどなく離婚。お医者さんと再婚したとか。関わり合いになりたくない女優さん。佐和子お前も見習え。季実子と比べれば吉永小百合さんは「天使」です。季実子テレビ・ドラマに時々出る。手を握ったらビール瓶で殴られたろう。
或る女 (新潮文庫)
主人公、葉子が若さ、美貌、健康を持て余し、ついにその身を持ち崩す様が語られた、長編小説。国木田独歩の恋人をモデルとして発表された当時、話題になった作品である。 今の時代から考えるとそれほど突飛だと思われない主人公葉子の言動、はては生き様であると思う。時代の空気は彼女の物語にハッピーエンドをもたらすことを許さなかったのだろうか。 小説の前半はひたすら葉子の自己中心的でなんの美点もない人物描写にうんざりさせられたが後半からは、そういったことに惑わされず、一人の人間としての或る女の人生模様にたっぷりと魅せられた。長編小説でしか味わえないある種の感情の微妙なひだの奥深くまで葉子の道づれとなった。
一房の葡萄 (角川文庫クラシックス)
『一房の葡萄』です。童話の名作の一つ。
有島武郎の作品。舞台は横浜です。
描かれているのは、悪、というよりも、弱さ、というべきでしょうね。
いけないことと知りつつも悪いことに手を出してしまう弱さ。欲望に負けてしまう弱さ。
決して他人事ではなく、何かに負けてしまう弱さは誰しも持っているもの。それに対して真摯に向き合うように、問いかけているように思いました。
そして。
弱さを持っている人間に対して、どう向き合うべきか。友達として。あるいは教師として。特に子供に対して大人がどう接するか。現代においても通用するメッセージ性を秘めているようにも感じられます。
絵の具を盗んでしまった主人公が本当に反省していることをしっかりと理解して、単に叱るのではなく、葡萄を与える。
そういう包容力のある先生と出会えていれば、素直に真っ直ぐ育つこともできるでしょう。
だから友達も、罪を詰り続けるのではなく、普通に優しく接したわけです。
現代の人間関係は、そんな甘いだけではない現実です。でも、すっぱいだけではないことも忘れないでほしい。そういう気持ちになります。
朗読 日本童話名作選「でんでんむしのかなしみ」
自宅介護している病気の父親のために購入しました。
たくさんの話が入っていることと話し手さんの話し方が非常に聞きやすいので良いと思いました。
父親は、それなりの年齢のため、知らない話が多いかもしれませんが、基本的に童話ですので誰でも楽しめる内容だと思いました。