南極料理人 [DVD]
南極、ドームふじ観測拠点に務めるおっさんたちが、「西村くん、」と堺雅人 演じる
料理人の男性に呼びかけたあと、めいめい珍妙なことを好き勝手に言ったり注文したり
する。そんで飯食ったり、あと本当にくだらない馬鹿なことをいい歳こいてみんなで
楽しそうにやったりとか。そんな映画。
「お父さんがこんな白くてよくわかんないとこ行ったら寂しいだろ?」とは、南極
基地行きを命じられて出発を控えた堺雅人が娘に言った言葉だ。しかし、たとえ真っ白な
氷以外になんにもないような場所であったって、人間がそこで暮らし、飯を食っている
限り、ドラマは必ずそこに生まれる。拠点の外の広大な氷原、拠点の中のトイレに風呂場、
各人の部屋の扉がずらりと並ぶ基地の廊下に、共用の電話機が設置されたコーナー、
調理室、そして、八人の男が囲むちょっと長めの食卓。定点やシンプルな軌道の動きでもって
撮影するカメラが、観測メンバーの一人、数人、あるいは全員が基地で送る日常を
静かに切り取る出来事の数々は、劇的ではないけれど、南極という特異な状況
ならではの面白さと、人間の生活行為そのものが持っている普遍的なおかしさにあふれている。
洗練されたセリフの掛け合いや会話の「間」も見事だし、おっさんたちの南極での
「遊び」も観ていて本当に楽しそうだった。暇だけどそれを潰せる娯楽もあんまりない、
それじゃ頭使って自分らなりに楽しむしかないよな、ってよく考えれば学生時代によく
あることで、そういう意味ではこれはおっさんたちの第二の青春なのかもしれない。
どんなものでもそうだが、人に何かを薦めるのはけっこう難しいものだ。自分が良いと
思った部分を、他の人もそう思ってくれるとは限らないし。映画もその例にもれない。
けれど、気心知った仲間が集まって屈託なく笑いながらふざけあうのを見て「楽しそう
だなー」と思わない人はそういないと思うし、寒いところで一生懸命働いたあとに
塩気のきいたおにぎりとあったかい豚汁を食べるところを想像して「うまそうだなー」と
思わない人はもっと少ない気がする。真っ白な大地の上の、おっさんたちの食器片手の
青春映画、肩肘張らずに多くの人に楽しんで欲しい。
ごくせん 2002 DVD-BOX
レンタルビデオ店でドラマコーナーを見ていた時「ごくせん 第1シリーズ」が全本レンタル可能だったので、借りてみてみた。
シリーズ中では一番だとは思っていたが、全話見終わったあと「このシリーズってこんなにすごかったのか」と思わされた。
以前見たときよりも、教えられたことが多く、また強烈だった。
一番学ばされたのは、「人を動かすのは熱い気持ち」なのだということ。
人を動かすのは「テクニック」だと思っていた。
しかし、主人公・山口久美子(仲間幸紀恵)はそんなものなど一切使わずに、反発する生徒たちを動かそうとする。
はじめは動こうともしなかった生徒たちがなぜか行動を共にするようになる。
なぜだろうと思いながら、また自分との違いは何なんだろうと思いながら見ていて浮かんだ言葉がある。
『情熱』という言葉。
「そうだ自分とこの人の違いは熱くなれているかいないかだ」と気づいた。
これは何も本作に限ったことではなく、古今東西の成功者すべてに言えることだ。
今、世の中はテクニックがすべてという風潮がある。
しかし、大企業の人物伝などを読んでいるとそうはおもえない。
例えば、本田宗一郎は叱るときにスパナを投げることがあったという。
それをされた社員は、逃げるかと思えば逃げない。
それはなぜかといえば、事あるごとに「俺はホンダを世界一のメーカーにしてやる」と熱く語ったからである。
結局、大きなことをやる人間はみなこうなのだ。
それを伝える方法に違いこそあれ、皆共通して熱く、大きな志をもっているものだ。
「人を動かすのはテクニックだ」と思っている人はぜひ見てほしい。
きっと考え方が変わるはずだ。
桜田門外ノ変【DVD】
「桜田門外の変」というと井伊直弼が悪役として描かれがちだが、本作はそういった後世の偏見を排している点を大いに評価したい。
方法は違えども双方の立場から少なくともベターと思える手段で、祖国を護ろうとした過程における一通過点として起こった事変。その後の志士たちの悲劇的な逃亡を描いているが、その先にある明治の御代における日本の自主独立と発展を想うと、それは必要不可欠な産みの苦しみだったのではと感慨深げになってしまう。